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 ホームセンター大手カインズの池照直樹デジタル戦略本部長は2020年10月12日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2020」で「IT小売業への変革 デジタル戦略の実現」と題して講演した。これまでカインズが取り組んできたDX(デジタルトランスフォーメーション)施策や内製チームづくりについて紹介したほか、企業がデジタル戦略を推進する上での勘所などについて解説した。

「日経クロステック EXPO 2020」で講演するカインズの池照直樹デジタル戦略本部長
「日経クロステック EXPO 2020」で講演するカインズの池照直樹デジタル戦略本部長
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 カインズは2019年度からの3カ年中期経営計画で、デジタル戦略の強化を柱の1つに掲げる。2019年7月に池照氏がデジタル戦略本部長に就任して以降、エンジニアを大量採用するなど開発を内製できる組織づくりを進めてきた。1年程前に20人程度だったデジタル部門は、すでに100人超に拡大しているという。

 池照氏は、開発を内製できる強い組織をつくりデジタル戦略を進めるには「経営者の覚悟が重要」と強調する。「よく『デジタルのプロを採用したからあとは任せるよ』というような経営者の話を耳にするが、それでうまくいくビジネスはほとんど存在しない」(池照氏)。改革を成すには経営者がきちんと覚悟を持ち、人、モノ、カネを割り当てることが必要になるという。

 「1人のデジタルのプロが行う“君に任せたデジタル戦略”ではなく、会社全体で取り組む“周りを巻き込んだデジタル戦略”である必要がある。そうやって5年、10年をかけて(デジタルを使った改革の)文化を根付かせるべきだ」

 池照氏は企業がデジタル戦略を推進する上でのポイントとして「収益性をきちんと担保した上で着手すること」を挙げた。使うキャッシュと得られるキャッシュを何度も検証し、「3年後にこうなるから今着手すべきだ」という具体的な形に落とし込むべきだという。そしてすぐに動き、小さな事例でもいいから早期に結果を出す必要性を強調した。「ぽつんとデジタル組織をつくって、1年間何も成果がないようではだめ。なるべく早く結果を出して社内で信頼を得ること。そうすると『こんなことをしたいがデジタルでできないか』と、いろんな相談がくるようになる」(池照氏)。

 池照氏は最後に「企業が成長を求めればひずみが出るのは当たり前。何もかも100%完璧にやろうとすると物事はなかなか前に進まない。ひずみを怖がるのではなく、それをうまくコントロールし何度も直して筋肉質な組織にしていくことが重要」と強調。また「経営チームにとってルールはつくるもの。『今までこうだったからやらない』ではなく、外部や内部環境の変化に合わせてルールをしっかりつくり上げて計画・戦略を支えていくことが大切だ」と述べ、講演を締めくくった。