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 「思い込みを捨てて、ありのままの世界を見よう」――。翻訳家として活躍する関美和氏は2020年10月14日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2020」で講演した。関氏が翻訳を手掛け、国内で90万部を超えるヒットになっている『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著、日経BP発行)のエッセンスを紹介しながら、新型コロナ禍の世界で生きていくうえでのヒントを提示した。

「日経クロステック EXPO 2020」でオンライン講演する翻訳家の関美和氏
「日経クロステック EXPO 2020」でオンライン講演する翻訳家の関美和氏
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 講演はFACTFULNESSに掲載されているクイズを交えて進んだ。例えば「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう? A:20%、B:50%、C:80%」「世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう? A:9年、B:6年、C:3年」などだ。

 正解は予防接種の問題がCの80%、学校教育の問題がAの9年。いずれも多くの人が間違えるという。著者のロスリング氏がこうしたクイズを各国のさまざまな人に出したところ、ランダムに答えを選んだ場合に正解する確率(33%)を上回った人は10%にすぎなかった。「ほとんどの人は、世界を悲観的に見ている」(関氏)のだ。

 なぜそんなことが起こるのか。ロスリング氏は「世界をありのままに見せてくれない10の本能」が影響していると分析している。世界が大きく分断されていると思い込む「分断本能」、世界が1つの切り口で理解できるという「単純化本能」、誰かを責めれば物事が解決すると思い込む「犯人捜し本能」などだ。

 以上のようにFACTFULNESSのエッセンスを紹介したうえで、関氏はこの書籍が日本で広く受け入れられた背景を考察した。「感染症の流行などさまざまな要因があるが、その1つに日本人が悲観的なことがあるのではないか」というのが関氏の見立てだ。

 関氏が例として挙げたのは、複数の国の若者を対象にした内閣府の調査(「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」、2013年度)。「自分自身に満足している」と答えた人の割合が、日本は他国より少なかった。経済協力開発機構(OECD)の調査でも、「自分が健康だと思うか」と答えた人の割合が先進国で最も低い部類だった。だが現実は、寿命の長さや生活の質を見ても日本人は最も健康な部類といえる。

 これらを踏まえて関氏は「“ドラマチックに世界を見なくてもいい”ことが、コロナ禍やコロナ後の生活で1つのヒントになると思っている」と語りかけた。事実を正しく見て、危険を正しく恐れる。長い目で見れば社会も人もおそらく良い方向に変わっていく。そうした意識を持つことが重要という。

 とはいえ、10の本能は頑張っても消すことはできない。「自分にも他人にもそうした思い込みがあることに気づくこと、思い込みからくる失敗を自分にも他人にも許すこと。それが社会にとって重要だと、ロスリング氏は言いたかったのではないか」と関氏は指摘した。

 最後に関氏が触れたのは、小さな進歩に気づく大切さだ。「小さな進歩は長い年月をへないと分かりにくい。だが小さな進歩に気づけば、“何をやっても変わらない”ではなく、自分が何か未来に貢献できると思えるのではないか」とし、講演を締めくくった。