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「現場仕事のテレワークは不可能」の常識を変える

 Creative Worksは、「現場仕事はテレワークでは不可能」という常識を覆した。「緊急事態宣言が出た当時、電車通勤に不安を感じた溶接職人からの申し出がきっかけで在宅リモートワークを採用した」(宮本氏)。もともと技術教育向けに開発していた家庭用IoT溶接機を溶接職人に自宅に持っていってもらい、リモート勤務での溶接作業を実現した。

 宮本氏はクラウドの生産管理システムやWebカメラ、Web会議システムやSNS(交流サイト)ツールなどを駆使して、工場の現場からリモートで職人に対して作業指示を送り、進捗管理、実績や成果の管理まで実行した。2020年10月時点では溶接職人が現場で作業する通常勤務体制に戻っている。Creative Worksは溶接を実地で学べるワークショップ(教室)の開催も手掛けており、感染問題に配慮しながら再開している。

溶接職人のリモートワーク(投映資料の出所:Creative Works)
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溶接職人のリモートワーク(投映資料の出所:Creative Works)
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溶接職人のリモートワーク(投映資料の出所:Creative Works)
関連記事「溶接職人まさかの在宅ワークの道のり、DXの鍵は30万円IoT溶接機」https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04690/

 Creative Worksは以前からクラウド生産管理システムを導入して使いこなし、SNSを使ったやり取りも日常化していたなどの点で、今回のリモートワークに取り組める下地がもともとあった。「あまり苦労することなくリモートワークの実践ができた」と宮本氏は語る。「実際の取り組みにより、『リモート在宅ワークが適用可能な作業』と『現場でないとできない作業』の適切な選択の必要性、安全面の配慮や気持ちの切り替えなどの精神面サポートの課題、といった学びがあり、今後に生かしていきたい」(宮本氏)

 由紀精密もまた緊急事態宣言を受けて、自社スタッフの半数を占める機械設計部隊をリモートワークへシフトした。「設計者は3D-CADを自宅に持ち帰り、リモートでつなぎながら自宅で設計作業をしてもらった。実は、複数拠点間でのリモートでの共同作業には既に取り組んでいたため、皆、違和感なく在宅で作業できている」(大坪氏)

 ただし部品製造などの現場作業は、リモートワークは無理――と大坪氏は考えていた。工場の現場にある大きな旋盤を従業員の自宅には持ち帰るなどということは到底できないからだ。しかし、対談で宮本氏の溶接リモートワークの取り組みを聞いて、大坪氏は小型旋盤「VISAI」について思い出したという。

小型旋盤「VISAI」(投映資料の出所:由紀精密)
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小型旋盤「VISAI」(投映資料の出所:由紀精密)
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小型旋盤「VISAI」(投映資料の出所:由紀精密)

 VISAIは、2014年に由紀精密が碌々産業(東京・港)と開発したデスクトップ高精度CNC旋盤である。長さが1mに満たないコンパクトな機械。交流100Vの家庭用電源で稼働でき、プログラム入力などの操作がモバイル端末のWebブラウザなどから実行できるネットワークマシンだ。「開発した当時は考えもしなかったが、VISAIがリモートワークにマッチしそうだと思った」(大坪氏)

 今後、溶接以外に旋盤加工でも、現場作業の新常識が生まれそうだ。