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アナログとデジタルの役割分担

 大坪氏も「感覚や勘などを頼りとする作業でも、日ごろ何度も繰り返すような作業についてはデータ化できる。一方、職人自身しかできない難易度の高い作業、新しい領域での作業はデータ化が難しい」と説明する。

 「人が一度確立した技術は、定量化・数字化し、デジタル化できる。それで職人が仕事を奪われるかといえば、そういうことはない。習得した技術は後に続く人に伝授し、機械に任せるところは任せ、自分は新しいことにチャレンジするといったことが可能になる。皆でそれを実践すれば、どんどん技術力が高まっていく」(大坪氏)

 工作機械の技術も時代を経てどんどん高度化しているが「どんなに高性能な機械を使っても、最後の数ミクロンの追い込みは職人の技術力が左右する。熟練の職人がそれを克服したら、さらに高性能な機械を使ってナノミクロンレベルにチャレンジする。これがずっと繰り返されていくものだと考えている」(大坪氏)。

 デジタル技術は上手に活用しなければ、かえって技術を劣化させてしまう恐れもある。また、「勘・こつ」の部分を単に見せるだけでは、後に続く人が解釈を誤り、それが伝承されてしまう恐れもある。そのために、両氏が共通して「重要」だと述べているのは、「アナログとデジタルの適切な役割分担」である。