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 「日経クロステック EXPO 2020」の開催5日目を迎えた2020年10月16日、慶応義塾大学 システムデザイン・マネジメント研究科 教授の神武直彦氏が「あなたにもビジネスチャンス、宇宙IoT活用のススメ」と題した講演を行った。神武氏は、まず宇宙からの地球観測や位置測位に関するデータの利活用は政府機関や大企業に限られていたが、近年ではそれらのデータを誰でも利用できる時代が到来していると語った。人工衛星は「気象衛星ひまわり」に代表される観測衛星、全地球測位システム(GPS)や「準天頂衛星みちびき」などの測位衛星、通信衛星の3つに分かれており、「これらが地上のIoTデバイスと連携することで、色々な社会課題を解決できる」(神武氏)と言う。

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 そうした宇宙IoTの事例として、神武氏は、自らが手がける3つの事例を紹介した。1つめは大規模農場でアブラヤシを栽培するマレーシアのFGV(Felda Global Ventures)の取り組みだ。広い農場にアブラヤシを植え替える際、従来はメジャーを用いて均等に植えるようにしていたが、精度が低いために必要な本数を植えられない状況だった。そこで用いたのがGNSS(全世界測位システム)だ。対象地域の面積や地形をドローンや地球観測衛星で取得し、植える必要のある木の本数と場所、最適配置を計算させる。緯度経度情報が分かる端末を用いて、その場所に木を植えていくという流れによって、「非常に作業は簡単だが、精度を高められる仕組みを実現した」(神武氏)。

 神武氏はこうしたシステムの実現の裏に「マルチGNSS」によって衛星測位の精度が向上していることがあると強調した。衛星測位というとGPSが有名だが、GPSは米国が運用しているもので、「必ずしも日本で位置を測るためには精度が高くない」(神武氏)と言う。「ロシア、欧州、中国、インド、日本が独自に衛星を上げており、それを総称してGNSSと呼ばれているが、それら衛星の信号の一部に相互運用性があり、すべての衛星の信号を利用することで測位の精度が上がる。米国のGPSだけでは精度が10mくらいになってしまう場合でも、米国や中国、日本の衛星を利用することで精度が10倍、約1mまで向上する。さらに『基準局』の補正データを用いることで精度を向上させることができる。こうした技術をマレーシアの取り組みで利用したところ、通常数十万円するような測位デバイスを、1万円程度で作ることができた」(神武氏)

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