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「持続的な幸せ」は訓練や学習で変えられる

 幸せは遺伝などで生まれつきポジティブになりやすい人など「変わらない幸せ」と、ボーナスなど外から得られる「一時的で持続しない幸せ」、さらに「持続的な幸せ」の3種類があり、持続的な幸せは「訓練や学習によって変えられる部分がある」(矢野氏)という。

 組織がやるべきことは、非財務指標を数値化することだと矢野氏は続ける。 「一人ひとりの前向きな心と人間関係の指標であるハピネス関係度の2軸で分け、両方とも高い『挑戦的で持続的な幸せ』の領域に組織として常に持っていくことが重要だ。当初はセンサー自体をつくらなければならなかったが、今は体の動きを測るセンサーを内蔵したスマートフォンが世界中にあるので、アプリをダウンロードするだけでこの2軸のマッピングが組織単位で把握でき、組織同士で比較もできる」(矢野氏)

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 ポジティブな組織をつくるためには「孤立した人をつくらないこと」も重要だという。「孤立した人をつくるとその人がダメになるだけでなく、周りの生産性を下げてしまう。そういう人をつくらないような声かけができるようにアプリをつくってマネージャーに使っていただいたところ、1年の平均受注率で34%も差が付いたという結果が出た。このような仕組みも多くの組織で導入が進んでいる」(矢野氏)

 大げさなことではなく、「1日1分のちょっとしたことで組織は変わる」と矢野氏は続ける。「例えば日立の営業600人に、アプリ上で毎日ちょっとしたアドバイスを出して見てもらうようにしたところ、法人営業26部署の中でもよくアプリを見ている人ほどハピネス関係度が良くなり、54%も向上した。翌四半期の受注達成率は27%も上がった。ちょっとしたことで、まだまだ伸びしろがあるということだ。1日1分、これだけで我々のものの見方がすごく変わる。習慣の力は非常に大きい」(矢野氏)

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 コロナウイルス禍でリモートワークが進む中で新たな問題が生まれたことから、アプリ内で新たな機能を設けたと矢野氏は語った。

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 「リモートワークが始まってから、意識的・計画的な会話はそれなりにできているが、無意識の雑談などが減って心配だということが経営課題になっていたため、『プチ報連相』いう機能をつくった。今日はこんなことを頑張りますとか、調子がいいですといったように報告する仕組みだ。アプリはこのようなカスタマイズが簡単にできるようになっている」(矢野氏)

 矢野氏は経営において「幸せを生んでいるか」をあらゆることの物差しにすべきだと語った。「組織や企業は、ものやサービスを提供して、より高い価格で選ばれるという指標から、私や家族を幸せにしてくれたのか、あるいは提供している会社自身が従業員を幸せにしているのか、こういうことで選ばれる『幸福資本主義』の時代にこれからなっていくと思う。先ほどのハピネス関係度は、幸せを産んでいることの指標であり、あらゆる社会、ビジネスの活動の基本となる物差しだ。人々も当然、人を幸せにするサービスを受けたいし、マンションを買うときも間取りや駅からの距離だけでなく、そのマンションがみんなを幸せにする人たちが住んでいるかの方がよほど重要だ。そういうことを奨励するための仕組みをサポートするようなことができると思う」(同氏)

 最後に、同氏は、「人それぞれが『幸せになりたい』ということを素直に社会や企業の中に入れていくことで生産性を高めていき、新しい世の中を皆さんと一緒につくっていきたい」と結んだ。