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 日経クロステック EXPOの開催8日目となる2020年10月19日、日立製作所 フェローの矢野和男氏が「予測不能に挑む企業経営:幸せを中心とする企業に向けて」と題した講演を行った。現在、コロナウイルス禍で人々の生活が大きく変化し、企業経営も大きな変革が求められてきている。そんな中で矢野氏は「予測不能」と「幸せ」というキーワードが重要だと語った。

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 「社会が大きく変化するときに一番ダメなのは、今までのやり方ではできなくなったと嘆くことだ。これまでは、計画をつくってPDCAを回し、仕事を標準化して横展開する。しかし状況が変わったのに計画に従ってチェックしていてはダメだ。だから実験をして、そこから学ぶということを何度も繰り返すことが重要だ。実験といってもランダムではなく、目的をきちんと決めること。実験と学習で手段が分かってくるので、目的にこだわりながら手段を柔軟に変えていく。こういう判断ができるような仕組みにしなくてはならない」(矢野氏)

 しかし一般的な会社組織は営業や調達、企画など機能ごとに分かれており、1つのことを行うためには調整役が必要になる。そこで米軍のような仕組みづくりが参考になると矢野氏は続ける。「米軍は陸海空軍のほかに、海兵隊がある。彼らは陸海空軍の機能と能力を持ち、上陸作戦を担う。巨大な陸海空軍から専門家を集めてプロジェクト的に上陸作戦を遂行することも理論的にはできるが、刻々と状況が変わる中でいちいちそれぞれにお伺いを立てるようなことはできない。このような変化の時代には、ビジネスも毎日が上陸作戦のようになっていく。日々上陸作戦をやれる人材は、上司から言われたことを守って、きちんとおとなしくこなしていく人ではダメだ。米軍では調整力も突撃精神も高い人をつくっており、そういう人たちを集めている。ビジネスの世界でもこういうポジティブな人をつくらなければならない」(矢野氏)

 「標準化」という横展開から「実験と学習」を行う組織や社会へと変わるためにはポジティブな人材を生まなければならないと矢野氏は話す。