全3581文字
PR

新システムでNYの再開発案件を受注

 新たな価値創造に向けたDXとしては、「パレットIoTシステム」がある。同システムは、パレットの位置と稼働状況を可視化するもので、紛失を激減させ、輸送効率の向上も果たした。輸送時の二酸化炭素排出量の最大5%削減も実現。これまでは、同社でガラス搬送用に使っているパレットのうち、約1割が毎年回収不能になっていたという。今後は欧州やアジア地域への導入も進め、2022年までに対象パレットを3万台に増加することを検討しているという。

 この他、「Coating on Demand」と呼ぶ仕組みも紹介した。建築デザイナーの要望や好みを、シミュレーションを用いて確認して仕様を確定し、その場でデジタルデータを工場に転送。その日のうちに試作品を完成させるという取り組みだ。翌日には実際のガラスで、出来栄えを確認できるという。遮熱・断熱といった性能と意匠性を両立させるべくこの仕組みを構築した。これにより従来は、数カ月かかっていた仕様決定が劇的に短縮。米ニューヨークのハドソンヤードの再開発案件での受注もこの技術が奏功したという。

現場を知るデータサイエンティスト養成

 AGCのようなものづくり企業で上記のようなDXを推進するには、開発や生産、販売、物流といった現場の知識と同時に、高度なデータ解析技術も備えた「二刀流人材」(倉田氏)が要る。そこで同社は、独自のデータサイエンティスト育成プログラム「Data Science Plus」を展開している。2022年には上級レベルの人材を50人、入門・基礎・応用レベルの人材を2300人に増やすことを目標に、育成に取り組んでいる*。

*2019年時点は、それぞれ30人と1000人ほど。

 これまでも同社は、データサイエンティスト人材の育成と、グループ内の社内展示会やセミナーを通じてデジタル化に向けた啓蒙活動と組織風土の醸成を進めてきたという。これに加え、将来的に事業経営を担う人材がDXを踏まえて事業戦略を立案したり、工場の技能者が現場のデータを活用して改善活動を進めたりといった力を養う機会を設けていくという。