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 旭硝子として創業100年を超える歴史を刻み、2018年7月に現在の社名に変更したAGC。2017年、同社は経営企画部門に「スマートAGC推進部」を設置し、トップダウンで全社のデジタル化を推進している。オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2020」では、常務執行役員 技術本部長の倉田英之氏が、同社の開発・製造部門におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)について紹介した。

「日経クロステック EXPO 2020」で講演するAGC常務執行役員 技術本部長の倉田英之氏
「日経クロステック EXPO 2020」で講演するAGC常務執行役員 技術本部長の倉田英之氏
(出所:日経クロステック)
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DXの目的は価値の創造

 AGCが考えるDXとは、「お客様、社会に貢献する新たな価値を創造すること」と倉田氏は強調する。同社の事業は多岐に渡るため、それぞれの事業ごとにDXにおけるターゲットやゴールが異なり、DXを全社で一様に推進するのは難しい。それ故、経営層をはじめ、全社でDXの目的を正しく共有することが重要だという。

 AGCでは欧米、日本やアジアの各地域で独立していたITインフラを2002年に束ね、グローバルでの一体運営を開始した。これを機に通信ネットワークもグローバルベースに移行。2014年から米Amazon Web Services(AWS)を活用してクラウド化にも着手し、2018年にはこれをほぼ完了したという。

 同社は1990年台からデジタル化に着手。CAD/CAMに加え、シミュレーション開発にも取り組んできた。インダストリー4.0の動きが高まると、必要な領域からDXを推進。2015年からはスマートファクトリーの構築を開始し、17年には経営企画部門に「スマートAGC推進部」を設置した。これを機に幅広いビジネスプロセスでデジタル化を進めている。

 この他、経理、購買業務システムを皮切りに、ドイツSAP社のERP(企業資源計画)「SAP R/3」をベースに業務の標準化を推進。早期に標準化とグローバル運営に着手した点は「AGCの強みの1つ」と倉田氏は胸を張った。

基盤作りから本格的な取り組みへ

 スマートAGC推進部を立ち上げた後のDXにおいて、同社は2つのフェーズを設定した。17~20年度の3年間では「DX実現に向けた基盤作り」(フェーズ1)、20年度以降は「本格的なDXの取り組み、実現」(フェーズ2)がテーマとなった。

 具体的にフェーズ1では、[1]コストダウンやリードタイム短縮による効率化を狙った「オペレーショナルエクセレンスの取り組み」、[2]品質トレーサビリティーや素材・製品の開発、商流・物流の変革といった「素材メーカーとしての競争基盤の強化」を推進してきた。フェーズ2では[3]デジタル社会に向けた製品の機能拡張やソリューション提供、ビジネスモデルの変革などからなる「お客様への付加価値の提供」を進める。

AGCが進めるDXのフェーズと狙い
AGCが進めるDXのフェーズと狙い
(出所:AGC)
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 事業によってデジタルの活用法が異なるため、これら3つの領域を設定した上で、各事業にとって最適な取り組みを推進していくという。