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 マスクに関しては米国、フランス、韓国など、いずれの国においても中国からの輸出規制はいまだ厳しい。また品質への不安もあり「国内産」を求めるユーザーの声は大きいという。「商談をすると現地小売店の食いつきが違う」(大山社長)のだそうだ。

進出国拡大を見据え、グローバルな生産管理の実現を目指す

 消費国でのマスク製造は同社がもともと、米国をはじめとする3カ国に商圏直結の生産拠点を構えていたからこそ素早く着手できていることは確かだ。とはいえ、わずか半年でそれを成し遂げるスピード感はやはり特筆に値する。

 その秘密はノウハウの蓄積にあると大山社長は語る。マスクの生産がそうだったように、大連の工場群ではその立ち上げを自ら行い、しかも生産の自動化に約30年前から着手してきた。センサーやロボットを活用した自動化技術の水平展開が可能であるという強みを持っている。

 しかし、そもそも中国に生産拠点を構えた理由の1つは、人件費の安さが可能にする人海戦術にあったはずだ。同社はなぜそこに自動化を持ち込んだのだろうか?

 大山社長はその問いに対し、「品質のブレに対する懸念」があったと説明する。自動化への投資は回収に時間がかかるケースはあるものの、結果として得られる品質の安定化で十分費用対効果を得られるという判断だ。現在は画像センサーを用いた不良品検査などに人工知能技術を積極的に適用しているほか、現地と本社をインターネットでつなぎ、グローバルな生産管理を実現する設備投資を積極的に行っているという。

建設中の米ペンシルベニア工場(イメージ図)
建設中の米ペンシルベニア工場(イメージ図)
米国ではすでにアリゾナ州、ウィスコンシン州、テキサス州の3工場が稼働中だ。工場設立で培ってきた技術を活かし、同社は新興国への進出も見据えている(出所:アイリスオーヤマ)
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 こうした投資は海外に工場を造り、運営するために派遣する人員が半減するなどの成果に結びついている。マスクが良い例だが自動化が進んだ設備は技術移転も容易になる。いずれは日本から人員を派遣するのは立ち上げ時だけにして、ロボットのティーチングや自動化設備の管理は日本で、オペレーションは現地の技術者が行う“一極管理の実現”を目指していると話す。

 新規工場を立ち上げるときの技術指導にはかなりの労力を要するが、デジタル技術の導入でそのコストは削減可能とする。地産地消を目指し、積極的に多くの国や地域への工場建設を考えている同社にとって、このノウハウが確立できれば多大なメリットが得られる。

 実際に同社はタイやベトナムに現地法人を設立。米中対立で関税が高騰している中、北米市場を担う生産地を中国以外へ移そうという同社の思惑がはまり、現在はその両国で競い合うようにASEAN(東南アジア諸国連合)地域での業績を上げているそうだ。

 工場立ち上げの低コスト化が進めばさらに多くの地域へと進出しやすくなる。大山社長は「今まで先進国中心にビジネスを展開してきたが、今後は新興国にも広げられる。一気にグローバル化を進められそう」と、その確かな手応えを語った。

ビジネスを展開する全地域でECに注力

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AIサーマルカメラとデスクスクリーン
AIサーマルカメラとデスクスクリーン
現在のアイリスオーヤマは一般消費者向けだけでなく、法人向け商品も手がけている。サーマルカメラやデスクスクリーンなど、コロナ禍で需要の高まる商品にしっかり対応できている(出所:アイリスオーヤマ)
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 園芸用品を皮切りに成長を続けるアイリスオーヤマだけに、同社の製品というと以前はホームセンターで買うというイメージを抱いていた人は少なくないはずだ。しかし現在は自社運営のものも含め、自社運営サイトや他社のWeb通販サイトなどを通じたECの売り上げが好調だ。同社はビジネスを展開するすべての地域でECに注力している。

 同社のECへの取り組みは10年以上の歴史がある。自社でECを手掛けるメリットは、新商品導入のハードルが低くなること。特に海外市場では人的なコストを含め、販促への投資が圧縮できる利点があると説く。

 しかも、「エンドユーザーにとっていいものを作ろうと考えてきた」(大山社長)同社にとって、ダイレクトに消費者と向き合えるECは親和性が高いという。卸や小売店への配慮を必要としないため、ECの方がユーザー第一で開発した商品を売りやすいと大山社長は自信を見せる。

新たに参入する「水事業」の拠点となる富士小山工場
新たに参入する「水事業」の拠点となる富士小山工場
(出所:アイリスオーヤマ)
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 マスク製造についてもそうだが、地産地消、製造の自動化、そして自社ECサイトの販路開拓と、そのどれもがロジカルに結びつき、コロナ禍において大きな成果へと結びついていることに驚きを隠せない。

 先を見通す洞察力とロジカルで的確な打ち手、地産地消への取り組みみなど、同社が持つ企業文化の強みが浮き彫りになったオンラインセッションとなった。

大山社長(日経クロステック EXPO 2020の講演動画)
大山社長(日経クロステック EXPO 2020の講演動画)
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