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 『アフターデジタル2 UXと自由』(日経BP)の著者であるビービット東アジア営業責任者の藤井保文氏は2020年10月21日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2020」で講演した。企業には「UX(ユーザーエクスペリエンス)を改善し続けられるチームが必要で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的は新たなUXの提供である」と述べた。

 ビービットは顧客の理解やUXを起点にDXのコンサルティングを手掛けている。藤井氏は上海オフィス勤務で顧客には現地の中国系企業などが多く、中国の事例を基に講演した。中国ではシェア自転車やフードデリバリー、タクシーの配車アプリなどが広く使われている。

講演するビービットの藤井保文氏
講演するビービットの藤井保文氏
(撮影:日経クロステック)
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 中国と日本では環境や法規制の違いはあるものの、欧米などでもオフラインの行動だった生活すべてがオンラインにつながってデジタルデータ化して個人にひも付き、あらゆる行動データを利用可能な時代になった。そのため、藤井氏は「行動データを利活用できるかによって企業の強みや生死が分かれるようになり、日本もその一途をたどっている」とした。

 この変化を踏まえて藤井氏は「アフターデジタル」という言葉を提唱した。日本企業の経営者が中国企業の経営者と面会すると「DXの立脚点がリアルに寄りすぎている」という違いがあったためだと振り返った。

 日本企業はデジタルをおまけや付加価値とする考え方で「店舗でいつでも会える顧客がたまにWebやアプリを使う」というイメージだという。しかし今後はデジタルが起点となり「SNSなどで顧客にいつでも会えて当たり前で、たまに店舗に来てもらえる」ようになる。そのため「リアル接点というレアで貴重な場」をどう活用するかという考え方に移行していくとした。

 藤井氏はこうした社会変化によってビジネスも変化すると予想する。顧客が住む地域や年齢層といった「属性データ」を活用する時代から、「行動データ」を基に最適なタイミングで商品やサービスを提供する時代になるという。

 産業構造も転換する。藤井氏は、顧客の行動データを多く持ち、細かな状況を把握できる決済プラットフォーマーが上位になり、サービス提供企業やメーカーは下請けになると指摘。ただし行動データはあくまでUXの改善に活用するもので、改善のループをどう作るかが「行動データの時代の競争原理」だと強調した。