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自分すら変えられないのに、顧客を変革するなどと言えるのか――。事業改革と軌を一にして、富士通の内なる改革が始まった。日常業務から基幹システム、人事制度、オフィス、社員の思考プロセスまで丸ごと変える。

 2020年7月、富士通社内のDXプロジェクトが動き出した。その名も「フジトラ・プロジェクト」。富士通トランスフォーメーションの略だ。

 「DXしませんか、などと顧客に言っている場合ではない。まず自分たち自身が変わらなければ」。同プロジェクトを率いる福田譲執行役員常務はこう言ってはばからない。CIO兼CDXO補佐として、CDXOの時田隆仁社長とともに富士通自身のDXに挑む。

変化し続ける文化を根付かせる

 フジトラ・プロジェクトの中核を担う人材が約20人の「DX Designer」だ。時田社長や福田執行役員常務らの直下で、全社のDX案件の整理や進捗管理、課題取りまとめを担当する。経営層と現場をつなげる役割も担う。

 DX Designerには専任者のほか、現場との兼任者もいる。情報システムや経理財務、マーケティング、渉外、人事、広報IR、Ridgelinezなどの現場と兼務し、それぞれが持つ担当業務の専門性を生かして課題解決に当たる。

 各事業部門には「部門DX Officer(DXO)」を新たに据えた。各部門の役員が指名したDXの現場リーダーで、全15部門に合計17人がいる。部門の枠を超えて改善の具体策を検討し実行に移す。「たいていの課題は部門によらず共通だったり関連していたりする」(福田執行役員常務)。

図 改革活動「フジトラ・プロジェクト」の推進体制
図 改革活動「フジトラ・プロジェクト」の推進体制
全社改革プロジェクトが始動 SAPジャパン社長から転じた福田譲執行役員常務が率いる(写真:陶山 勉)
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 2020年7月の同プロジェクト発足以降、9月末時点で200件余りの改善案件が集まった。事務手続きから製品サービスの開発手順、人事評価、働き方改革までその中身は多様だ。

 プロジェクトメンバーが内容を整理して100件ほどに絞り込み、そのうえで3カ月を1サイクルとして改善策を実施し、結果を評価する。部門DXOが1つずつ案件を受け持ち、サイクルを終えるたびに結果と効果、課題を検証して案件の優先順位を見直す。

 フジトラ・プロジェクトの狙いは募集した改善案件を遂行するだけにとどまらない。絶えず変わり続ける意識と仕組みを富士通に根付かせるのも重要なミッションだ。「魚を求めている人には釣りざおを与えて釣り方を教えるべきだ。変わり続ける文化を浸透させる」(福田執行役員常務)。