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現時点で打つべき手は全て打った――。時田社長の現状分析だ。一方で改革は始まったばかりであり、終わりがないことも理解している。乗り越えるべき課題を検証するため、時田社長の言葉に今一度耳を傾ける。

(写真:村田 和聡)
(写真:村田 和聡)
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改革遂行へ乗り越えるべき3つの課題
  • テクノロジー企業としての本分を貫徹できるか
  • 「変わろうとしない大多数」をどう動かすか
  • 自ら変わり続ける組織へと生まれ変われるか

 「一連の改革をポジティブに評価している」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の田中秀明シニアアナリストは、富士通が本業の「テクノロジーソリューション」で利益率10%という目標を達成するのは十分可能だとの見方を示す。「グローバルで戦うために海外事業をスリム化し、筋肉質の体制に変えようとしている。時田隆仁社長のスピード感は非常に良い。前社長の流れをくみながら加速している」。

 富士通の株価は2020年9月28日時点で1万4255円。時田社長が就任した2019年6月に比べて2倍近い水準だ。2020年3月期業績は前期比62%の営業増益を達成、2021年3月期予想もコロナ禍にありながら0.2%の営業増益を見込む。堅調な業績に加え、矢継ぎ早に打ち出した改革の先行きへの期待が、株価に表れているようだ。

 ただ時田社長を筆頭に富士通の経営陣や社員は、株価の伸びは目標達成への期待であり、責任の重さでもあると理解しているはずだ。課せられた命題はある意味ではっきりしている。「方針は定まった。後は成果を出すだけだ」(田中シニアアナリスト)。

自前の技術力あってこそ

 改革を成し遂げるためには乗り越えなければいけない課題が3つある。

 1つはテクノロジー企業としての本分を貫徹すること。ITをなりわいにする以上、製品やサービスを生み出す技術力が企業の根幹になければ成長はおぼつかない。

 前述の通り、DX事業においてはRidgelinezが富士通の製品やサービスにこだわらない方針を明言し、富士通自身もそれを容認している。だからといって富士通が今後自前の技術力を磨く努力を怠れば、製品供給元だけでなく開発・運用のパートナーとしての地位すら危うくなるだろう。

 東京証券取引所で2020年10月1日に発生した大規模なシステム障害は、富士通の成長戦略にも影を落とす。同社は基幹システムの構築・運用といった既存SI事業を「For Stability」と名付け、成長の土台と位置付ける。同事業が揺らげば、富士通の成長戦略そのものが画餅となる。

 日本の金融システムに対する信頼まで揺らがせてしまった。障害の原因となった機器の納入事業者として心よりおわびする。

 一方で、新しいチャレンジはやめない。誤解を与えるかもしれないが、システムの安定稼働や信頼性向上に全力を尽くしながらも、そこに閉じこもっていては富士通の使命は果たせない。信頼を積み重ねるべく、最善の努力をしつつチャレンジを続け、技術力や知見を積み重ねる。