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 みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)は、2002年4月と2011年3月、二度にわたり大きなシステム障害を起こしました。ビジネスや生活を支える銀行サービスに、再びこのようなことがあってはならない。強い決意のもと、基幹システムを全面刷新する「MINORIプロジェクト」に着手しました。

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外部との連携、内部の変革を加速し金融の枠を超えた価値を実現していきます

 MINORIは、新しい基幹システムの名称です。企業理念である「お客さま、経済、社会に豊かな“実り”を提供する」という思いを込めています。

 二度の障害は、老朽化・複雑化した基幹システムが原因でした。旧システムは、3つの銀行の勘定系システムからなり、いわゆる第三次オンライン時代の設計のまま。そこに順次改修を繰り返してきたため、システム構造が極めて複雑になり、ブラックボックス化していたのです。

 システムリスクの管理、障害発生時の対応体制、IT人材の育成と配置、IT全体に対する経営陣のイニシアチブにも課題がありました。MINORIプロジェクトはこれらの経営課題を乗り越えるための取り組みでした。

基幹システムを「MINORI」に刷新 最重要視したのは安全性・安定性

 MINORIは、システムアーキテクチャにSOA(Service Oriented Architecture)を採用し、部品化したプログラムを効率的に組み合わせて利用する方法をとっています。

 これによって4つの特徴を実現しました。

 1つ目はシンプル化によるメンテナンス性の向上です。複雑に構成された「密結合」を改め、プログラムやシステムコンポーネントが「疎結合」でつながっています。部品化したプログラムを再利用し、組み合わせやすい。修正範囲が限定的になるため、システム改修にかかる時間とコストを大幅に削減でき、改修コストは従来の3割程度で済みます。

 2つ目は外部との連携が容易になったことです。従来は外部システムと接続するためには、基幹システムの中で送受信制御、フォーマットやコード変換の処理が必要でした。MINORIは、外部と容易に接続可能なAPIゲートウェイを公開し、ハブ機能で接続処理を一手に引き受けます。これにより、フィンテック企業は、銀行の残高確認や資金移動の機能を簡単に利用できます。既に延べ20社がこのAPIゲートウェイを利用しています。

 3つ目は顧客管理と事務処理の効率化です。多くの銀行に言えることですが、口座の事務処理は口座を置いている支店ごとに行っています。別の支店で取引を申し込んだ場合は、オンライン端末での設定変更など非効率な事務処理が発生し、お客様を待たせしてしまう。MINORIは全店共通の「顧客元帳」を実現しました。どこの店でも簡便に事務処理が可能です。

 4つ目が最も重要なのですが、安全性・安定性の向上です。2011年3月に発生した障害は、夜間バッチ処理(オフラインでの一括処理)の仕様が原因でした。例えば、預金口座から貸出金を回収する処理の場合、1件でもエラーが出るとすべての処理が止まり、また1からやり直していたのです。

 MINORIは夜間バッチ処理を廃止し、オンライン処理に変更しました。仮に問題が起こっても、エラー部分をスキップすることでサービスの遅延を防ぐ。障害に強いシステムに仕上がっています。

大プロジェクトの経験を生かし金融の本当の価値をつくり出す

 MINORIプロジェクトは、新たな経営基盤を実現しただけでなく、無形の資産も我々にもたらしました。

 まず挙げられるのが大規模プロジェクト推進のノウハウ。品質管理、リスク管理の手法も身に付きました。数多くのITのプロを育成し、活躍の場をつくることができたのも大きい。全員参画の成功体験も得難い資産です。

 この資産を生かし、みずほはデジタル化の取り組みを加速しています。現在進めている5カ年計画でも、根幹にデジタル化を据えています。大切なのは、既存の枠を超えて金融の本当の価値を考え、つくり出していくことです。

 お客様や様々なプラットフォーマー、外部のサービスや機能を縦横無尽に結び付け、ビジネスフロントだけでなくバックエンドの事務もデジタル化する。これによって新しいバリューチェーンの創出を目指します。

 取り組みの一部は、既に形になって表れてきました。みずほ銀行の「次世代店舗」はその1つです。店頭に設置したタブレット端末でMINORIとの連携による様々な自動処理を実現しており、本年10月から「事務レス化」を可能にします。先に紹介した外部システムとの接続の容易さが、成果につながっています。事務レスによって、社員は顧客のコンサルティングに注力できます。

 ソフトバンク、ヤフーとのアライアンスで「J.Score」という新しい融資サービスも開始しました。対面営業や書類ではなく、条件を基にAIが貸出を判断します。スマホアプリから利用できるので、これまで以上に幅広い顧客層にアプローチできます。

 既に100件を超える新規ビジネスに挑戦し、実証実験、事業化検証を進めてきました。昨年から次世代金融プロジェクトと金融推進プロジェクトもスタートしており、社員の自発的な発想による新事業の創出、生産性向上のアイデアなどを広く募集する取り組みも進めています。

 ウィズコロナの環境の中で、お客様のニーズは大きく変化しています。今後もみずほはMINORIプロジェクトで培ったノウハウ、知見、新しいカルチャーを結集し、デジタル化による次世代金融サービスの価値創造にチャレンジしていきます。

本記事は2020年8月26日~28日にオンライン開催された「IT Japan 2020」のリポートです。