「ウエアラブル端末は治療後のフォローに利用できるのではないか」――。慶応義塾大学医学部特任講師である木村雄弘氏は、診療を担当する外部のクリニックで「Apple Watch」を患者に貸し出し、心拍数やアクティビティなどのデータを記録してもらっている。「病院での医療機器による様々な検査は一時的なもの。生活のほとんどは病院外で過ごすのだから、日常生活のデータを診療に生かして治療の効果を高めたい」(木村氏)とウエアラブル端末の活用に積極的だ。

ウエアラブル端末を利用する生活習慣病の患者の中には、明らかに生活習慣や行動が変化した人がいるという。以前は体を動かす習慣のなかった患者が散歩を始めた。「歩数などが可視化されたことで、診療中に『週4回7000歩を目標に歩いてみましょう』など具体的にアドバイスできるようになった。患者本人のモチベーションも保ちやすい。また、不整脈の治療後などで経過観察が必要な場合、家庭で継続的に心拍を計測してもらうと再発の早期発見につながる」と木村氏は話す。
木村氏のように、治療後のフォローに向けて、ウエアラブル端末の活用に興味を示す医師が増えている。ウエアラブル端末で常時モニタリングすることで、患者が自分の体に関心を持ち生活習慣や行動を変えやすくなる。疾患が悪化する状態やリスク因子が明らかになり、最適な治療を実施できるといった効果も期待できる。その結果、患者の予後を良好に保つことが可能になる。