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 健康・医療分野でウエアラブル端末を積極的に活用する機運が高まり、世界の企業が事業機会をうかがっている。そのなかで日本企業は、医療機器の測定機能を小型化してウエアラブル端末に組み込んだり、新たな項目の測定を可能にしたりする技術の開発を進めている。いずれも医療機器としての承認を目指しており、いつでも精度の高い計測値を得られることを強みに、新たな市場の創出に挑む。

カフが内蔵されたウエアラブル血圧計「HeartGuide」
カフが内蔵されたウエアラブル血圧計「HeartGuide」
(出所:オムロン ヘルスケア)
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 「いつでも血圧を計測できることをコンセプトに開発を始めたが、小型化しながら高い測定精度を維持するのは本当に難しかった。実用化できたのは技術開発の努力のたまものだ」(オムロン ヘルスケア 循環器疾患商品事業部 グループリーダー代理の松尾直氏)――。オムロン ヘルスケア(京都府向日市)は腕時計型のウエアラブル血圧計「HeartGuide」の日本での販売を2019年12月に開始した。開発着手から商品化まで、約7年の歳月を要したという。

 HeartGuideは医療機関や家庭で使う血圧計と同じオシロメトリック法で血圧を測定する。測定開始のボタンを押すと、ウエアラブル血圧計に搭載したカフが空気で膨らみ、手首の動脈を圧迫。その後カフ内部の圧力を下げ、脈波の変化から血圧を測定する。

 カフで十分に血管を圧迫しないと正確に血圧を測定できないが、腕時計型にするにはカフの幅を従来の半分にする必要があった。3つのカフで手首の血管を固定し圧迫する技術がブレークスルーとなり実用化にこぎ着けた。

 「研究が進めば今後、日中の血圧変動に応じた治療薬を投薬するなど、HeartGuideを治療の参考に使ってもらえる可能性がある」(松尾氏)。日中の血圧測定が治療ガイドラインで奨励されれば、ウエアラブル血圧計の市場が広がることにもつながる。