道路や水道をはじめとする既存インフラの運営・維持管理に、PPP(官民連携)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)、公共がインフラの運営権を民間に売却するコンセッション方式の活用が進んでいる。さらに、グリーン・デジタル社会の実現に向けて、洋上風力発電や水素サプライチェーンなどの「グリーンインフラ」、データセンターやスマートシティといった「デジタルインフラ」の整備も急務だ。これら生活に欠かせないインフラの開発・運営を担う民間インフラ投資市場は、数少ない成長領域といえる。三井住友トラスト基礎研究所の福島隆則PPP・インフラ投資調査部門長が、インフラビジネスの最新動向を読み解く。

福島隆則のインフラビジネストレンド
目次
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縮小する上場インフラ市場に檄、J-REITとの一体化を
上場インフラファンド市場の縮小が止まらない。残り5銘柄となった上場インフラ市場を独立させておく意味はあるのか。上場不動産投資信託(J-REIT)市場との統合も含め、ファンド運営者や投資家の立場で再考すべき時期に来ている。
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卯年に跳ねるPFI
日本のPFIは、卯(う)年に大きな転機を迎えてきた。PFI法の制定や、コンセッション方式の導入が卯年だった。卯年が再び巡ってきた2023年以降は、維持管理型のPFIが飛躍的に発展すると予想する。既にいくつかの自治体が先進的な取り組みを始めている。
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マスク氏にインフラ運営の覚悟はあるか
人々が日常的に利用する“インフラ”となったツイッター。イーロン・マスク氏による米Twitter(ツイッター)の買収は、個人や企業がインフラを私物化するリスクを再認識させた。連想して、公共インフラの民間委託にも同様のリスクがあるのではないかと危惧する声も挙がるが、その心配は無用だろう。
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加速する包括的民間委託で覇権を握れ
包括的民間委託が道路分野でも大きな潮流になりつつある。自治体が続々と民間事業者を募り始めた。「道路+河川」や「道路+公園」といった分野横断型の委託も登場している。
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PFIでこそ求められるカーボンニュートラルの提案力
政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」から間もなく2年。脱炭素化を促す国や自治体の政策が一気に動き出した。設計・建設・運営・維持管理などを一括したPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業でも、カーボンニュートラルに関する提案の良しあしが事業者選定のカギを握る。
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ついに登場、建設会社の第3形態とは
前田建設工業などの持ち株会社であるインフロニア・ホールディングスが2022年7月、国内インフラを投資対象とする2種類のファンドの組成を発表した。ファンド運用は、建設会社の新しいビジネスモデルとして期待できる。
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アベイラビリティ・ペイメント、普及の条件
民間による公共施設の運営や維持管理といった業務のパフォーマンスに応じて、公的財源から対価を支払うアベイラビリティ・ペイメント方式。対談の後編では、同方式を国内に普及させ、民間活用をさらに進めるための課題を議論した。
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民間による運営や維持管理を可視化、アベイラビリティ・ペイメント
内閣府は2022年5月、「指標連動方式に関する基本的考え方」を公表。民間による公共施設の運営・維持管理のパフォーマンスに応じて対価を支払うアベイラビリティ・ペイメント方式の導入に向けて検討項目などを整理した。同方式の普及の条件を探る対談の前編では、米国の道路事業で採用された仕組みを中心にお伝えする…
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インフラ非常事態! メンテナンス財源に新型国債を
水道施設の老朽化に伴う事故が相次いで発生し、人々の生活や経済活動に大きな支障を来している。“インフラ非常事態”とも呼べる状況下では、民間資金の活用による老朽化施設の維持管理・更新も重要だが、インフラメンテナンスに使途を限定した新型国債を発行するなど、積極的かつ大胆な財政出動が望まれる。
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自治体との包括連携がブーム、建設会社も乗り遅れるな
自治体と民間企業の包括連携協定がブームのようになるなか、建設会社が当事者となる事例も出てきた。協定の範囲は幅広いが、中核にあるのは地域の脱炭素だ。自治体の課題を解決するパートナーとして、再生可能エネルギー発電施設の開発や省エネサービスの提供を担う。
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公共インフラと投資は融合できるか
民間資金による日本のインフラ投資は以前と比べて盛んになってきたものの、規模はまだ小さく、投資対象も再生可能エネルギー発電施設にほぼ限定されている。道路や庁舎といった公共インフラへの投資事例はないに等しい。機関投資家などから資金を調達して公共インフラを開発、運営できれば、公共サービスは安定化し、資金…
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スタジアムの公園使用料免除に「ノー」、地方創生の起爆剤に波紋
栃木県栃木市内の都市公園にサッカースタジアムを建設した民間企業に対して、市が固定資産税や公園使用料を免除する行為を否定した判決の波紋が広がっている。各地で取り組みが進む「スポーツによる地方創生、まちづくり」は国も推奨する施策だが、一筋縄ではいかないようだ。
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空港だけじゃない、地方に広がる「スモールコンセッション」
空港など大規模インフラを対象とするイメージが強いコンセッションだが、その活用分野が広がっている。人口10万人に満たない自治体が主導するコンセッション事業も増えてきた。
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アクティビストに狙われる建設会社、M&Aなどで積極策を
準大手建設会社の西松建設は、アクティビスト(物言う株主)の圧力を受けて、伊藤忠商事と資本業務提携する道を選んだ。今、アクティビストのターゲットになる建設会社が増えている。その要因は様々あるものの、端的には企業としての事業戦略に魅力が無いということだ。
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歓迎されない「6条提案」、民間が欲しいのはインセンティブ
国や自治体など公共施設の管理者に対し、民間事業者が具体的な施設を指定してPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業を提案する「6条提案」。PFI普及の画期的な手法として期待されたものの、実施件数は伸び悩んでいる。
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水道事業の不都合な現実、打開に必要な2つの連携
少子高齢化が進行するなか、水道インフラは老朽化と資金不足という大きな課題に直面している。今、策を講じなければ、水道事業は立ちゆかなくなるかもしれない。
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いよいよ羽田・成田が検討対象に、コンセッション導入から10年
羽田空港と成田空港のコンセッション事業化に向け、政府が検討を始めた。実現すれば久々の大型案件となる。日本にコンセッション方式が導入されて10年。これまで30件近い事業が実施されてきているが、空港はその半数近くを占める主要セクターだ。
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スーパーシティ構想にできた溝、大胆さ求める政府とためらう自治体
画期的な未来都市をつくる目的で動き出した国の「スーパーシティ」構想に、31の自治体グループが応募した。しかし、国のワーキンググループは2021年8月、「大胆な規制改革の提案が乏しい」と厳しい評価を下し、全グループに再提案を求めた。住民合意とマネタイズ(収益化)という高いハードルがある。
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道路は整備から運営へ、2度の五輪で変化した需要に商機あり
東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、通行料金によって交通需要を調整する「ロードプライシング」が導入された。一方、持続可能な高速道路システムについて議論してきた国土交通省の部会は、道路更新財源の継続的かつ安定的な確保の検討を提言。恒久的な有料化への関心が再び高まっている。
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地域公共交通の危機を新エネルギーが救う
鉄道や路線バス、旅客船といった地域公共交通の経営が危機的な状況に陥っている。人口減少に加え、コロナ禍による利用者減が追い打ちをかけた。生活の足を守るため、国や自治体からの緊急的な支援は必要だが、根本的な解決策とはなりにくい。交通事業自体が厳しければ、他で稼ぐことを考えるしかない。