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PPP(官民連携)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)、国や自治体が公共インフラの運営権を民間に売却するコンセッション。こうした民間の資金やノウハウを生かしたインフラビジネスの最新動向を、三井住友トラスト基礎研究所PPP・インフラ投資調査部の福島隆則部長が展望する。

 菅義偉政権の誕生によって、インフラやPPPのビジネスはどう変わるのか。菅政権はこの分野でも安倍晋三前政権の政策を継承する姿勢だが、特に改革の加速が期待できる3つの有望分野がある。

道路の包括的民間委託が普及

 第1はPPPだ。菅首相はかねて「活力ある地方の創生」や「民間の活用」を主要政策に掲げてきた。国の未来投資会議でPPP/PFIを主導した東洋大学教授の竹中平蔵氏は、小泉純一郎内閣で総務大臣を務めていた。その際、菅首相は副大臣として補佐した立場だ。PPP/PFIでは、地方銀行がメインプレーヤーになり得る。

 PPPの手段として注目を浴びるのが包括的民間委託だ。内閣府が2020年7月に公表した「PPP/PFI推進アクションプラン(令和2年改定版)」は、一般道路や学校を例に、「キャッシュフローを生み出しにくいインフラについても積極的にPPP/PFIを導入していく必要がある」と記した。

 さらに、7月に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」では、利用料金の生じないインフラを対象に、公共がインフラの管理状況などに応じて民間事業者にサービス購入料を支払うアベイラビリティペイメント方式を活用すると記載。ガイドラインを策定し、2022年度までに10件以上の可能性調査を実施する方針を掲げた。

 包括的民間委託は、東京都府中市の道路の維持管理が先行例として知られている。同市では現在、地元の建設会社を代表企業とするJVが2018年度から2020年度までの契約で、市北西部にある市道126kmの補修や清掃、街路樹の剪定(せんてい)などを担っている。道路の管理コストが下がるだけでなく、速やかな補修で市民からの苦情も減るなど、効果が現れているもようだ。こうした取り組みが、自治体の広域連携と長期委託に拍車をかけ、対象領域も道路以外に広がっていく可能性もある。

京王線府中駅付近のけやき並木通り。東京都府中市が維持管理を包括的民間委託する市道の1つ(写真:日経クロステック)
京王線府中駅付近のけやき並木通り。東京都府中市が維持管理を包括的民間委託する市道の1つ(写真:日経クロステック)
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 菅首相は「コンセッションは地方創生の起爆剤」とも発言してきた。しかし、コロナ禍によってコンセッション事業を延期したり、PPP/PFIの入札をストップしたりする自治体が相次いでいる。民間事業者も旅客需要が頼りの空港運営を敬遠するようになった。広島空港のコンセッションの事業者選定で、三菱地所を代表とするコンソーシアムが入札を辞退したのが記憶に新しい。

 ただし、道路や上下水道施設などのインフラは、景気変動の影響を受けにくい“エッセンシャルアセット”である。コロナ禍による国・自治体の財政逼迫を踏まえれば、民間資金の需要は増す一方だ。アフターコロナのときこそ、PPPは発展しなければならない。