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新型コロナウイルスによる経営環境悪化と温暖化ガスの排出量削減への関心の高まりから、空港経営が変革を迫られている。目指すは温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロエアポート」だ。三井住友トラスト基礎研究所PPP・インフラ投資調査部の福島隆則部長が解説する。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のための入国制限で収入が激減するなか、シンガポール航空が遊覧飛行を企画した。チャンギ空港を飛び立った旅客機が数時間の飛行を経て同空港に着陸する「どこにも行かないフライト(flights to nowhere)」だ。

 ところが、この遊覧飛行に対して地元の環境保護団体が「不必要な温暖化ガスを排出する」と反対の声明を発表した。シンガポール航空は2020年9月末、企業イメージの悪化につながるなどの理由から計画を断念。代わりに、空港に駐機した旅客機をレストランにして、ディナーを提供する期間限定イベントを開催した。

厳しい経営状況に直面する航空・空港会社

 コロナ禍で航空会社の経営は厳しい状況にある。全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスは21年3月期に5100億円の赤字を、日本航空(JAL)は同最大2700億円の赤字をそれぞれ見込んでいる。需要はなかなか元に戻らない。海外も同様で、国際航空運送協会(IATA)は、21年の航空業界の売上高が新型コロナウイルス感染拡大前の19年比で46%減になるとの見通しを示している。

コロナ禍で運休や減便が相次ぎ、羽田空港の駐機場は飛べない機体であふれかえった。2020年5月撮影(写真:日経クロステック)
コロナ禍で運休や減便が相次ぎ、羽田空港の駐機場は飛べない機体であふれかえった。2020年5月撮影(写真:日経クロステック)
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 苦しいのは空港会社も同じだ。例えば、関西国際、大阪国際(伊丹)、神戸の3空港をコンセッション方式で運営する関西エアポート(大阪府泉佐野市)は、20年度上期(4~9月)の旅客数が前年比87%減だったことを明らかにしている。

 こうした未曽有の危機を受けて、国土交通省は20年10月末、着陸料や停留料の支払い猶予や、航空・空港会社の資金繰り支援などを策とする「コロナ時代の航空・空港の経営基盤強化に向けた支援施策パッケージ」を発表。コンセッション方式で民営化された空港についても、建物の維持・修繕や滑走路の更新工事といった空港活性化投資の先送りや、運営期間の延長などの支援策を盛り込んだ。

 新千歳空港をはじめ北海道内の7空港を運営する北海道エアポート(北海道千歳市)が、30年間を予定していた運営期間の延長を検討し始めたという報道もある。同社が国と結んだ契約では、運営期間を最大で5年延長できる。運営期間を延ばすことで、落ち込んだ収益を取り戻すのが狙いだ。