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鉄道、バス、タクシーといった公共交通のターミナルを官民連携で整備する「バスタプロジェクト」が、アフターコロナの新しいビジネスチャンスになるかもしれない。法改正によって、コンセッション方式も導入できるようになった。設計・施工のみならず、運営や維持管理まで含めた民間活用の新たな領域となる可能性を秘める。

 国土交通省は2021年4月8日、バスタ計画のよりどころとなる「交通拠点の機能強化に関する計画ガイドライン」を発表した。バスタとは、バスやタクシーなどの交通結節点機能を有する停留施設のことだ。

 公募で選ばれた「バスタ」という名称の由来は、バスがスター(星)のように各地に放射するさまや、バスターミナルの略、バス・タクシーの略など複数ある。バスタの整備事業が「バスタプロジェクト」で、政府は全国展開を推進している。様々な移動サービスを意味するMaaS(Mobility as a Service)や、周辺のまちづくり・にぎわいづくりとの連携も期待されるところだ。

機能を集約して便利になった「バスタ新宿」

 バスタの名を世に広めたのは、16年4月に開業した「バスタ新宿」(正式名称は新宿南口交通ターミナル)である。JR新宿駅南口の線路上空の人工地盤に整備された4階建ての交通ターミナルだ。高速バスやタクシーなどの乗降場を集約した。

JR新宿駅南口の線路上空の人工地盤に整備されたバスタ新宿。手前は甲州街道(写真:日経不動産マーケット情報)
JR新宿駅南口の線路上空の人工地盤に整備されたバスタ新宿。手前は甲州街道(写真:日経不動産マーケット情報)
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 これまで新宿駅の西口周辺に分散していた19カ所の高速バスの乗降場と、付近の渋滞の原因になっていた南口前のタクシー乗降場を4階と3階にまとめて配置。2階には改札を設け、新宿駅と直結することで鉄道との乗り換えをスムーズにした。施設内には待合所やトイレの他、土産物店、コンビニエンスストア、観光情報センターなどがあり、隣接する商業施設とも接続している。

 利便性を高めたバスタ新宿だが、旧制度の下で造られたため、民間のノウハウを生かしきれていないという課題もある。ターミナルの運営と商業施設の運営が、別々の事業主体になっているからだ。前者は日本バス協会などが出資する会社が道路管理者と協定を結んで運営。後者はコンビニエンスストアなどテナントが道路管理者に占用料を支払って運営している。これでは、商業施設から得られる収益をターミナルの維持管理に充てることができず、ビジネスモデルが限られてしまう。

道路法改正で一体運営が可能に

 それが20年5月の道路法改正によって、バスやタクシーなどを停留できる「特定車両停留施設」が道路施設に位置づけられるとともに、空港コンセッションと同様のスキームも使えるようになった。

 空港コンセッション事業では、滑走路やエプロンなど空港の基本施設を管理・運営する「航空系事業」と、空港ターミナルビルや駐車場などを管理・運営する「非航空系事業」を合わせた空港経営の一体化が実現している。空港ビルの賃料や売店で収益を上げ、それを原資に航空機の着陸料や施設利用料などを安くして、空港全体としての利用促進と収益最大化につなげるビジネスモデルだ。バスタでもこの法改正により、交通系のターミナルと非交通系の商業施設との一体運営が可能になった。

 事業方式には、公設公営、民設民営、公設民営などいくつかの手法がある。コンセッションは、公設民営の中でも民間の裁量が最も発揮できる方式だ。これによって、運営権に担保権を設定した資金調達も容易になる。

 現時点でコンセッション導入を決めたバスタプロジェクトはないものの、ほとんどのところで検討は行われている。運営事業者としては、これまで空港コンセッション事業を追求してきた鉄道会社や不動産会社、そして建設会社などが関心を示すだろう。