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鉄道や路線バス、旅客船といった地域公共交通の経営が危機的な状況に陥っている。人口減少に加え、コロナ禍による利用者減が追い打ちをかけた。生活の足を守るため、国や自治体からの緊急的な支援は必要だが、根本的な解決策とはなりにくい。交通事業自体が厳しければ、他で稼ぐことを考えるしかない。新エネルギー事業などとの組み合わせに、解決のヒントがありそうだ。

 両備グループのシンクタンクである地域公共交通総合研究所(岡山市)は2021年6月、地域交通事業者の14%が同年3月時点で債務超過になったと発表した。鉄道、路線バス、旅客船など全国の508社を対象にアンケート調査を実施し、123社から回答を得た。

 調査報告書は「何らかの補助や支援がなければ今年度中に経営維持が困難になると予想される公共交通事業者は46%も存在」と記し、「地方から半分程度の生活交通が消滅する恐れがある危機的状況」と警鐘を鳴らした。人口減少などで地域交通のビジネスモデルは成り立ちづらくなっていたが、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた格好だ。同研究所は、国や自治体の緊急支援や「公有民営」の制度化などが必要と提言した。

 こうしたなか、伊予鉄道(松山市)は21年6月、運賃の値上げを国土交通省に申請したと発表した。消費税率の変更に伴う改定を除くと、値上げは27年ぶりとなる。長野県松本市では、路線バスを「公設民営」にする検討が始まっている。バスや鉄道を運行するアルピコ交通(長野県松本市)から公的支援の要請を受けた市が、“市民の足”を守る名目で赤字の一部補填を決めたものだ。

鉄道の赤字を鉄道以外の黒字で補う

 自治体による民間交通事業者への赤字補填や、地域交通の「公有民営」や「公設民営」は1つの選択肢だ。しかし、自治体の財政も厳しく、根本的な解決策とはなりにくい。そこで大阪市は18年、財政逼迫や乗車人員の減少、今後の人口減などを理由に地下鉄事業を民営化。その後、コスト削減に大きな効果があったと報告した。赤字の地下鉄事業を抱える京都市も21年6月、最大限の民間活用を盛り込んだ行財政改革計画案を公表している。

 民営化にはコスト削減だけでなく、経営の自由度が高まるメリットもある。交通事業自体が厳しいと判断すれば、他の事業で稼ぐことを考えるだろう。

 例えば、JR九州の21年3月期決算は、営業収益2939億円のうち、鉄道などの運輸サービスが952億円、不動産・ホテルが801億円だった。一方、EBITDA(利払い・税引き・償却前損益)は運輸サービスの損失265億円に対し、不動産・ホテルが利益222億円と、運輸サービスの赤字を不動産・ホテルの黒字が補う構図になっている。赤字決算が続くJR北海道も、セグメント別では不動産賃貸の営業利益が黒字である。JR四国の長期経営ビジョンは、鉄道運輸収入の頭打ちを前提として、非鉄道事業の収益拡大に活路を見いだそうとしている。頼りにするのはホテル、駅ビル、不動産事業だ。

JR博多駅博多口にある駅ビル・商業施設のJR博多シティ。JR九州のグループ会社が管理・運営している。2016年撮影(写真:日経クロステック)
JR博多駅博多口にある駅ビル・商業施設のJR博多シティ。JR九州のグループ会社が管理・運営している。2016年撮影(写真:日経クロステック)
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 とはいえ、都市部を中心に広域交通ネットワークを有するJRのような会社は限られている。地方の交通事業者が同様の不動産事業を展開するのは難しい。千葉県の銚子電鉄のように、ぬれ煎餅などの物販の売上高が本業の鉄道事業をはるかに上回る交通事業者もあるが、特異なケースだ。地域交通の中でも、鉄道は固定費負担が大きい。人口減少地域の交通事業は、どう考えても独立採算が難しくなっていくだろう。