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東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、通行料金によって交通需要を調整する「ロードプライシング」が導入された。一方、持続可能な高速道路システムについて議論してきた国土交通省の部会は、道路更新財源の継続的かつ安定的な確保の検討を提言。恒久的な有料化への関心が再び高まっている。道路事業の軸足が整備から運営・管理に移るなか、民間委託の手法も多様化し、建設会社のビジネスチャンスは広がりをみせている。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、首都高速道路会社は夜間(午前0~4時)の自動料金収受システム(ETC)搭載車の料金を半額にする一方、昼間(午前6時~午後10時)に都内区間を利用するマイカーなどの料金を1000円上乗せする施策を導入した。これは渋滞や大気汚染の抑制などを目的に、特定の道路や地域、時間帯の通行に料金を課して交通需要を調整する「ロードプライシング」と呼ばれる手法だ。大会期間中、選手らの円滑な移動と安定した物流を確保するために導入された。

首都高速道路の入り口に掲げられた料金表。普通車の上限料金は通常の1320円から2320円に。トラックやバス、タクシーなどは値上げの対象外となる(写真:日経不動産マーケット情報)
首都高速道路の入り口に掲げられた料金表。普通車の上限料金は通常の1320円から2320円に。トラックやバス、タクシーなどは値上げの対象外となる(写真:日経不動産マーケット情報)
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 日本では限定的な導入にとどまってきたロードプライシングだが、海外では一般的な制度として定着している。高速道路の民間運営が進む米国では、乗車人数によって料金を変えたり、走行できる車線を指定したりする「管理レーン」も普及している。渋滞を抑制して道路利用者の満足度を高めるのが主な狙いだ。

 持続可能な高速道路システムについて議論してきた国土交通省の社会資本整備審議会国土幹線道路部会は2021年8月4日、特定の時間帯や経路における料金の割引や割り増しを本格的に導入すべきであるとの中間答申をまとめた。提言はETCやビッグデータの活用といったICT(情報通信技術)の進歩を踏まえたもので、日本でもロードプライシングが当たり前になる時代が来るかもしれない。

恒久有料化の議論再び

 中間答申では、日本の高速道路がこれまで採用してきた償還主義の見直しも求めている。

 償還主義とは、一定期間内に受け取る通行料収入で道路の建設費を賄い、その後は無料開放する制度のことだ。この制度の下では原則として、新設、改築、維持、修繕、その他管理費用を超える利益は通行料金に含めない。また、路線ごとに整備時期が異なることによる料金差が生まれないように、料金のプール制も採用している。現在の償還期限は2065年。14年に成立した改正道路整備特別措置法によって、料金徴収期間が15年延長されたものだ。

 現行の償還主義について、中間答申では道路の更新事業などに必要な財源が確保されていないと指摘。財源の継続的かつ安定的な確保が必要だとしている。財源は利用者負担を基本に、料金徴収期間の延長についても「具体的な検討を進める必要がある」と記した。

 今回の中間答申は検討の“進言”にとどまったものの、高速道路の恒久的な有料化を巡る議論は以前からある。12年に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故をきっかけに、老朽化対策の重要性を指摘する声が強くなった。今後の自動運転をはじめとする新しい技術に対応した道路の設備投資なども勘案すると、恒久有料化への理解は得られやすくなっているように思う。

道路事業者の選定にも競争原理を

 一方、恒久有料化によって蓄えられる安定財源は、高速道路会社の経営の緊張感を失わせるリスクもはらむ。コスト改善意識が薄れ、無駄を生む方向に作用するなら本末転倒だ。

 恒久有料化を志向するのであれば、道路事業者の選定にも競争原理を働かせ、サービスや収益のさらなる向上を狙うべきだろう。その1つの方法が、コンセッション方式の活用による道路運営事業者の公募だ。現状では特区制度を使う必要があるものの、競争を通じて最も質の高い提案をした事業者に運営を委ねることができる。