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自治体と民間企業の包括連携協定がブームのようになるなか、建設会社が当事者となる事例も出てきた。協定の範囲は幅広いが、中核にあるのは地域の脱炭素だ。自治体の課題を解決するパートナーとして、再生可能エネルギー発電施設の開発や省エネサービスの提供を担う。コントラクターからインフラデベロッパーへ、建設会社の変革が始まっている。

 多くの自治体が、人口減少による税収減や高齢化に伴う社会保障費の増加、インフラの老朽化、職員数の減少など、様々な課題に直面している。こうした状況下で、自治体と民間企業の包括連携協定が相次いでいる。

 官民の包括連携協定では、自治体と民間企業がテーマを限定せずに協議できる機会を設け、地域の課題を共有して解決策を探すのが一般的だ。環境負荷の軽減、観光振興、医療・介護の充実、災害対応など、地域の活性化や安全・安心を目的にしたものが多い。自治体は民間企業のアイデアやその後の事業化を期待し、民間企業はその事業への参画や自らの事業領域拡大を狙って協定を結ぶ。

 これまで自治体と包括連携協定を結ぶ民間企業といえば、金融・保険、電力・ガス、生活関連サービス、運輸など、第3次産業の企業が多かった。しかし最近は、建設会社が当事者になる事例も出てきている。

マイクログリッド事業を狙う西松建設

 西松建設は2022年4月、福岡県大木町(人口約1万4000人)と脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定を結んだ。脱炭素のまちづくりに向けた諸施策の推進、再生可能エネルギー発電設備や省エネ設備の導入・活用、地域レジリエンス(強じん性)向上、地方創生・少子高齢化対策につながる環境と経済の構築などがテーマだ。

 大木町には、町有地などに太陽光パネルや蓄電池、自営線を設置して、庁舎とその周辺にある体育館や図書館、小学校などで再エネを地産地消するマイクログリッド(小規模電力網)を構築する計画がある。日経BPの取材によると、町が21年8月にゼロ・カーボングリッド実行計画策定業務を委託したNPO法人の紹介で、西松建設が技術専門家として検討委員会に加わったことが、包括連携協定のきっかけになったそうだ。

大木町が庁舎周辺で計画するマイクログリッドの概要。2023年10~12月ごろの運用開始を目指す。町は電力の自給によって電気代を削減。さらに、災害時に大規模停電が起こっても、太陽光パネルや蓄電池からの電力で災害支援業務や避難所の運営ができるようにする(資料:大木町)
大木町が庁舎周辺で計画するマイクログリッドの概要。2023年10~12月ごろの運用開始を目指す。町は電力の自給によって電気代を削減。さらに、災害時に大規模停電が起こっても、太陽光パネルや蓄電池からの電力で災害支援業務や避難所の運営ができるようにする(資料:大木町)
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 西松建設はマイクログリッド事業の事業主体となる予定で、22年夏にも立ち上げる特別目的会社(SPC)への出資候補者でもある。同社はこうした事業構想を含め、地域の課題解決に取り組んでいく考えだ。

 これまで自治体は、建設会社とのこうした協定に消極的だった。公共事業の発注における「不適切な関係」や「他社排除」と見られることを避けたかったからだ。今回の事業について、大木町は「事業主体のSPCが工事などを発注する予定であり、そこに他社も参加可能だろう」と説明している。