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政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」から間もなく2年。脱炭素化を促す国や自治体の政策が一気に動き出した。「環境配慮型プロポーザル方式」を採用した設計業務では、二酸化炭素などの排出削減に配慮した技術提案が選ばれることになる。設計・建設・運営・維持管理などを一括したPFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業でも、カーボンニュートラルに関する提案の良しあしが事業者選定のカギを握る。

 東京大学は3棟から成る延べ床面積計1万1000m2のダイバーシティ&インクルージョン棟を本郷キャンパスに建設する。ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別や年齢、国籍、人種、障害などを越えて多様性を認め、共に活動できる組織や場を築こうという概念だ。大学が2022年7月に公告した基本設計業務は、環境配慮型プロポーザル方式を採用した。

 同方式は、新設や大規模改修の設計業務を発注する際、二酸化炭素などの排出削減に配慮した技術提案を求め、最も優れた提案者を選ぶ。環境配慮契約法に基づく基本方針(国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針)に説明がある。

 基本方針は、国が目標として掲げる「2050年カーボンニュートラル」を実現するための考え方を記したものだ。設計段階で効果が期待できる環境配慮策を採用することで、完成後の施設の生涯二酸化炭素排出量(LCCO2)を削減する狙いがある。

 今後、建築に限らず土木や設備も含めた公共施設の発注で、こうした傾向が強まるのは必至だ。設計・建設・運営・維持管理などを一括で発注するPFI事業にも、カーボンニュートラルが求められるようになるに違いない。

下水処理場を核に再エネマイクログリッド

 PFIで環境配慮型プロポーザル方式の導入の先駆けとして知られるのは、千葉県銚子市で08年に事業を開始した銚子市立銚子高等学校施設整備等事業だ。校舎や体育館などを新築、維持管理する事業への参加条件として、民間にLCCO2の算出を要請し、審査項目とした。

 プロポーザルには4グループが参加。審査の結果、省資源・省エネルギー・省コストの評価点が最も高かった三菱UFJリース(現・三菱HCキャピタル)を代表企業とするグループが総合評価点でもトップとなり、事業者に選ばれた。

 最近のPFI事業でも、脱炭素に着目した評価がなされている。22年7月に前田建設工業を代表とするグループが選定された神奈川県三浦市の下水道コンセッション事業では、同グループが主要設備をダウンサイジングし、ライフサイクルコストの縮減や脱炭素化を追求すると提案。市の審議会は、これらの具体的な取り組みを高く評価した。

 22年4月に国の「脱炭素先行地域」として選ばれた秋田県と秋田市の「流域下水道を核に資源と資産活用で実現する秋田の再エネ地域マイクログリッド」計画は、PPP(官民パートナーシップ)やPFIの導入を想定した事業として注目に値する。26年度の供用開始を目指す総事業費約45億円のプロジェクトだ。

消化ガス発電や風力発電、太陽光発電設備の導入を予定する秋田臨海処理センター。秋田市など8自治体の流域下水処理場だ。1日当たり14万3000m3の処理能力がある(写真:秋田県)
消化ガス発電や風力発電、太陽光発電設備の導入を予定する秋田臨海処理センター。秋田市など8自治体の流域下水処理場だ。1日当たり14万3000m3の処理能力がある(写真:秋田県)
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秋田臨海処理センターなどで導入予定の再エネ発電設備
再エネ設備導入場所導入予定量
出力
(kW)
年間発電量
(MWh)
消化ガス発電秋田県秋田臨海処理センター8006,073
風力発電2,3006,174
太陽光発電5,0005,227
太陽光発電秋田市汚泥再生処理センター500776
合計8,60018,250
(出所:秋田県の資料を基に日経不動産マーケット情報が作成)

 同計画はまず、臨海部にある下水処理場の敷地内などに消化ガス発電や風力発電、太陽光発電設備を導入する。消化ガス発電とは、下水処理の過程で生じる汚泥を微生物が分解して発生したメタンガスなどを燃料に発電する仕組みだ。次に、下水処理場と研究施設、スポーツ施設など周辺の8つの公共施設を自営線でつなぎ、再エネ電力を供給。蓄電池とエネルギーマネジメントシステムで電力需給を制御しながら、マイクログリッド(小規模電力網)を構築する。

 再エネによる年間発電量は1万8250MWh(メガワット時)を想定。不足する電力は、近隣にある固定価格買い取り制度(FIT)の期間を終えた「卒FIT」の風力発電施設から調達する。県などは電力由来の二酸化炭素排出量を年間約1万t削減すると同時に、消化ガスの販売による下水道事業の経営改善や住民が支払う下水道料金の軽減、雇用創出につながると期待している。消化ガスの販売によって年間2000万~3000万円の収入増を見込む。