日本のPFIは、卯(う)年に大きな転機を迎えてきた。PFI法の制定や、コンセッション方式の導入が卯年だった。卯年が再び巡ってきた2023年以降はどうなるか。包括的民間委託やアベイラビリティ・ペイメント方式を核とする維持管理型のPFIが、飛躍的に発展すると予想する。既にいくつかの自治体が先進的な取り組みを始めている。
2023年は卯年。株式相場には「卯は跳ねる」という格言があり、一般的には株価が上がる年と解釈される。しかし、伝統的な投資理論からすると、株価は上がる確率と同じだけ下がる確率もある。つまり上にも下にも跳ねやすい、良くも悪くも時代の転換点になりやすい年だといえる。
実は日本のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)でも、卯年は大きな時代の転換点となってきた。24年前の1999年は、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行された年である。次の卯年の2011年にはPFI法が改正され、インフラの所有権を国や自治体などが保持したまま、運営権を民間事業者へ長期間にわたって付与するコンセッション方式が導入された。
つまり、インフラを造ることを中心としたPFI第1期の「従来型PFI時代」、インフラの運営を中心とした第2期の「コンセッション型PFI時代」と、常に卯年が起点となってきたわけだ。PFI事業の実績は、22年3月末時点で932件を数える。
では、23年を起点とするPFI第3期は、どういう時代になるだろうか。筆者は、インフラメンテナンスを中心とした「維持管理型PFI時代」の到来を予想する。
民間資金が流れ込むために
インフラの維持管理は個別の事業単位では規模が小さく、民間にとって魅力的なビジネスになりづらい。民間の資金やノウハウを活用するには、できるだけ包括化・長期化して事業規模を大きくすることが重要だ。
これまで個別に発注してきた事業をまとめ、複数年契約で民間事業者に委託する。事業の包括化・長期化によって施設運営の業務効率が向上し、コスト削減効果も大きくなる。例えば、資機材の調達コストの低減や、業務の習熟度が高まることでサービス向上の効果が生まれる。同時に、発注側の職員の事務負担軽減にもつながる。
包括化には、道路といった1種類のインフラの維持管理について巡回や点検、診断、補修などの複数業務をまとめるだけでなく、道路と上下水道など複数種類のインフラの維持管理を組み合わせて発注する方法もある。さらには、自治体の枠を超えた包括化も考えられる。
加えて、民間ビジネスとしてインフラの維持管理事業を持続的に回していくためには、公的な財源だけに頼らない方法も検討しなければならない。国土強靱化政策など、インフラの維持管理には予算がそれなりに配分されているものの、財源は限られている。民間資金を積極的に活用することが、ますます求められるようになるだろう。