インフラビジネスにまつわる最近の出来事から5つのトレンドを拾い上げ、注目すべきポイントを解説していく。
- 再エネ主力電源化の切り札、送電網と蓄電池に商機
- 地方建設会社も再エネ会社設立
- まちづくりは建設業界の新たなフロンティア
- 相乗りサービスのNearMe、資金調達に大林組も参加
- 3D都市モデルでデータ連携、民間ビジネスを誘発するか
1. 再エネ主力電源化の切り札、送電網と蓄電池に商機
中部電力パワーグリッドと北陸電力送配電は2023年4月、太陽光発電と風力発電の事業者に出力を抑えるよう要請した。離島を除く広域的な出力制御は18年に九州エリアで初めて行われ、22年には東北、中国、四国、北海道エリアへ拡大。ついに今回、三大都市圏にまで広がった格好だ。
出力制御は電力の需要と供給のバランスを保つための措置である。需給バランスが崩れると、周波数が乱れて停電に至る恐れがある。太陽光発電や風力発電は日照や風の強さに合わせて発電量が変動するため、これらの発電割合が増えるとバランス調整の難易度が上がる。様々な調整をしてもなお、電力供給が過剰になると判断したときに、出力制御の指令が出る。冷暖房の需要が和らぐ春・秋で、工場などが止まる休日、好天の昼間などは、出力制御が起こりやすい。
太陽光発電が盛んな九州エリアでは、22年度に80回もの出力制御があった。今後、大規模な洋上風力発電所が稼働し始めると、捨てられる再エネ電力も増える恐れがある。抜本的な解決には、電気を地域間で融通し合う送電網の増強が欠かせない。
国内の電気事業者で構成する電力広域的運営推進機関は23年3月、広域連系系統のマスタープランをまとめた。50年までに送電網を強化するため、約6兆~7兆円の投資が必要になるというシナリオだ。海外では送電網の整備に民間資金が広く活用されている。日本でも今後、同様のビジネス機会が創出されることを期待したい。
蓄電池の普及も、出力制御を抑える解決策となる。政府は23年4月、再エネ導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプランで、「電力の安定供給を確保するためには、電力の需給を一致させるための調整力が必要であり、特に蓄電池の導入拡大が重要」と記した。
蓄電池分野では、民間ビジネスも進み始めている。変圧器大手のダイヘンは23年5月、再エネ事業大手のユーラスエナジーホールディングス(東京・港)が同年12月の稼働を目指して福岡県田川市で建設中のユーラス白鳥バッテリーパークに、系統用蓄電システムを納入したと発表した。出力1500kW、容量4580kWhで、GSユアサ製のリチウムイオン電池に出力調整などの仕組みを組み込んだ。送電線と直結して充放電する系統用蓄電システムを国産で構築し、一括納入するのは国内初だという。
2. 地方建設会社も再エネ会社設立
山陰合同銀行や常陽銀行、八十二銀行などの地域金融機関が、再エネ事業会社を相次いで設立している。そんな中、地方ゼネコンにも再エネ会社を創設する動きが出てきた。
新潟市に本社を構える本間組は23年4月、子会社の本間組リニューアブルパワーを設立した。資本金は1億円。再エネ関連事業やカーボンリサイクル関連事業の開発、提案を通して、カーボンニュートラルの実現に貢献していくという。
3. まちづくりは建設業界の新たなフロンティア
再エネ分野と同様、まちづくり分野も建設業界が目指す新たなフロンティアになりつつある。大成建設は23年4月、長崎県雲仙市と観光まちづくりに関する包括連携協定を結んだ。同社の画像認識AI(人工知能)技術を使って、雲仙温泉街の人や車の流れを予測。にぎわいなどの創出につなげる。さらに、同社が開発した地震発生直後の建物健全性評価システムを市の公共施設に導入し、災害に強い観光地づくりにも取り組む。
日本工営も23年4月、愛媛県伊予市と持続可能なまちづくりに関する連携協定を結んだ。デジタル化による市民サービスの向上や、ゼロカーボンシティの実現に向けた政策づくりなどで協力する。