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 AR(Augmented Reality)の普及を目指す米Facebook(フェイスブック)に立ちはだかる5つの壁。前回は見えてきたキラーアプリを紹介した。今回はARグラスで進める小型・軽量化や周囲の環境を3次元(3D)データとして記録した3Dマップ、プライバシー(個人情報)保護への取り組みを分析する。とりわけ重要なプライバシー保護で、Facebookは米Google(グーグル)の轍(てつ)を踏まないよう入念に準備を進めている。

 2012年に登場して注目を集めた「Google Glass」は、カメラで周囲を撮影することから、プライバシーが侵害される恐れがあるとみなされた。キラーアプリの不在と相まって、一般消費者用途に広がらなかった。

 プライバシーの問題は、FacebookがARの普及で重視する眼鏡型のARグラスや3Dマップとそれぞれ密接に関係する。3Dマップを構築するには、ARグラスに搭載したカメラやLiDAR(レーザーレーダー)で周囲を認識してデータ化する必要があるからだ。これらのセンサーによって人の顔や場所、日時、屋内などを記録する際に、プライバシーを侵害する恐れがある。

 プライバシー保護を実現するには、どんな場所で、どのようなセンサーでデータを取得し、そのデータをどのように保管・管理するのかまで、利用シーンを考慮して幅広く考える必要がある。ARグラスに搭載するセンサーの種類や性能、測定頻度などのハードウエア要件は、プライバシー対策で決まると言えるくらいだ。もちろんハードにとどまらず、データの抽象化や暗号化といったソフトウエア処理にも影響が生じる。

個人情報をひも付けた3Dマップ

 Facebookが構築を目指す3Dマップ「LiveMaps」は、とりわけプライバシー保護を考慮しなくてはならない。単なる位置情報や周囲の構造物、空間の3Dデータを含むだけにとどまらず、個人情報とひも付けているからである。

Facebookが構築を目指す3Dマップ「LiveMaps」
Facebookが構築を目指す3Dマップ「LiveMaps」
「Location層」と「Index層」、「Content層」の3層で構成する。ARグラスはLive Mapsを通じてAR表示に必要な情報を獲得し、ユーザーの状況や行動に即した自然なAR表示を可能にする。(出所:Facebookのイベント「Facebook Connect」の公式動画)
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 LiveMapsでは、現実空間の物体の種類、例えばどのような家具や植物などが存在するのかを記録する。仮想オブジェクト(物体)を重ねて表示する現実の対象物がどのようなものかまでARグラスに認識させるためである。加えて、現実空間に重ねて表示する仮想オブジェクト(物体)の画像や位置まで保存。さらに、ユーザーの個人情報とひも付けて「意味」まで付与する。例えば、単なるレストランではなく、誰それが気に入っているレストラン、といった具合だ。

 LiveMapsを構築する目的は、大きく2つある。1つは、ARグラス側の演算処理の負荷を低減するため。ハードウエアを簡素化するとともに、消費電力を削減して連続駆動時間を伸ばす。もう1つは、ARグラスを装着した人の行動のコンテキスト(文脈)や意図などをAI(人工知能)でくみ取りやすくし、適切なAR表示で装着者の支援を行うためである。