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 これまで本連載では米Facebook(フェイスブック)のVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)の取り組みを解説してきた。その総本山と言えるVR・AR部門「Facebook Reality Labs(FRL)」は、どんな研究開発をしているのか。FRLの責任者であるAndrew Bosworth氏に、20年9月開催のオンラインイベント「Facebook Connect」のトピックを中心に話を聞いた。(聞き手は根津 禎=シリコンバレー支局)

FacebookのAndrew Bosworth氏
FacebookのAndrew Bosworth氏
(出所:Facebook)
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FRLのミッションは?

 FRLでは、(ARやVRを利用した)新しいプラットフォームの構築を目指している。それは単に便利なだけではなく、人々をつなぐのに役立つものにしたいと考えている。そもそも、人と人とをつなぐということが、Facebookのミッションだ。

 コロナ禍によって、人と人が直接会ってコミュニケーションすることが難しくなった。そんな状況で、VRはうってつけの手段だ。VRなら人々と体験を共有し、人と人とをつなげやすい。

 (19年5月発売の)VR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)「Oculus Quest」(以下、初代Quest)は、当社が想像していたよりも大きな成果を上げた。20年に初代Questを利用した9割以上が、これまでOculusシリーズのHMDを利用しなかった人。つまり、Facebookの新しいユーザーだ。その結果、これまで1億5000万米ドルのVRコンテンツが売れた。今でも成長を続けており、35タイトル以上が100万米ドルの売上高を達成した。

 この成功を受けて、少し“クレイジー”なことをしてみた。大ヒットした初代Questよりも映像表示性能を高め、さらに小型・軽量化した上で、100ドル安い新製品(Oculus Quest 2)を投入することを決めた。世界中で一層VRが受け入れられることを期待している。

「Oculus Quest 2」
「Oculus Quest 2」
(出所:Facebook)
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 もう1つ、(Quest 2の発売を機に)日本市場を重視することにした。日本で初代Questはヒットした。さらにゲーム市場として、ゲーム開発の拠点として、日本は長い間先端を走っている。これまで日本ではオンライン販売が中心で、販売網は非常に限られていた。今回、量販店でもQuest 2を購入できるようにした。

 VRだけではなく、ARにも力を入れている。例えば、「Instagram(インスタグラム)」のフィルター機能がその好例である。同機能向けの開発環境「Spark AR Studio」を提供している。このエコシステムは非常に成功しており、既に40万人ほどのクリエーターが約190カ国に存在している。これまでInstagramを中心に事業を拡大してきたが、ARを「Messenger」アプリや(ビデオ通話機器の)「Portal」にも広げており、ARの取り組みを加速している。ARのクリエーターは、今まで以上に消費者にアクセスしやすい環境にある。

 Portalは当社にとって非常に重要な機器だ。コロナ禍によって、在宅勤務で活用されるようになった。それまで、Portalをビジネス会議に利用していた企業は皆無と言える状況だったものの、今や多くの企業がPortalを利用している。Portalは、「WhatsApp(ワッツアップ)」やMessengerに加えて、(Facebookのビジネス向けSNS)「Workplace」を利用できるからだ。(サードパーティー企業が手掛ける)「Zoom」や「GoToMeeting」「BlueJeans」などにも対応する。