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 ベビーカーの最新モデルの写真が並んだECサイト。スマートフォンで商品画像を選択すると、画面を通して目の前にベビーカーが現れた。指で画像を回転させると前後左右さまざまな角度で商品を見られる。拡大すると細部まで確認でき、素材の質感は本物さながらだ。

 自宅の玄関先や車のトランクに収納できるか、傘やバッグなどと比べた大きさはどうか。気になるポイントをチェックできたので、安心して購入できた――。

 ベビーカーを販売する米Bumbleride(バンブルライド)のECサイトで買い物をする様子だ。同社はAR機能を活用し、商品を疑似体験できる機能を同サイトで提供している。商品を購入する前に、AR機能で収納場所に収まるか自宅や自家用車で確認する顧客が多いという。購入前に自宅へ置いてみる――。ITを駆使して現実の店舗では難しい体験を提供し、購入につなげる。

3DモデルのベビーカーをAR空間へ自由に配置できる
3DモデルのベビーカーをAR空間へ自由に配置できる
(出所:バンブルライド)
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リアル店舗でもできなかった体験

 バンブルライドが使っているのが加Shopify(ショッピファイ)のAR機能だ。同社はサイトの設計からシステム開発、商品や顧客に関するデータ管理、決済、物流、マーケティング支援まで、小売事業者がECサイトを運営するために必要な機能を一通り提供する。ショッピファイを利用して運営するECサイトは2020年10月時点でおよそ100万店舗。2018年にAR機能の提供を始めた。

 ショッピファイのAR機能に使われる3D(3次元)モデルは「USDZ」と呼ぶファイル形式に基づいている。USDZは米Apple(アップル)が米Pixar Animation Studios(ピクサー・アニメーション・スタジオ)と共同開発したファイル形式である。特徴は専用のアプリケーションを使わずスマホの一般的なWebブラウザーで3Dモデルを閲覧できることだ。iOSの標準ブラウザー「Safari」のほか、AR機能「ARCore」を備えたAndroidのWebブラウザーで閲覧できる。

 「スマートフォンで買い物をする人の増加に加え、AR技術が進歩した。専用のアプリを使わずに消費者がARを体験できる環境が整ったのが大きい」。Shopify Japanのマーク・ワング代表はARに力を入れる背景をこう語る。AR技術を活用して仮想空間上で商品を手に取ったり自宅に置いたりと、ECでも実店舗での購買体験を再現しようというわけだ。消費者が商品に触れて確かめられないECの弱点を補う。テキストや画像より実物に近い形や質感を再現できる3Dモデルを使い、消費者の心をつかむ考えだ。