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 良質な通信インフラも過去のIT戦略も役に立たなかった。「敗戦」以外の何物でもない――。日経クロステックの独占取材に応じた平井卓也デジタル改革相は、ITを使った新型コロナ対策をこう総括した。日本政府がIT活用で世界に後れを取った反省を基に、デジタル庁の基本構想を語った(2020年10月12日にインタビューを実施)。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、外薗 祐理子=日経クロステック/日経コンピュータ)

平井卓也デジタル改革相
平井卓也デジタル改革相
1958年生まれ。1980年上智大学外国語学部卒業後、民間企業を経て1987年に西日本放送 社長に就任。2000年6月の衆院選挙に初当選して以来、一貫してIT政策を担当する。2018年10月IT担当相。自民党デジタル社会推進特別委員長を経て、2020年9月から現職。(写真:的野 弘路、以下同じ)
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新型コロナウイルスの大流行でITを使った感染症対策や行政支援が進んだ一方、様々な問題も起こりました。これを「デジタル敗戦」と呼んでいますね。

 政府は2001年にIT基本法を施行しました。2001年の「e-Japan戦略」や2013年の「世界最先端IT国家創造宣言」などのIT戦略も打ち出しました。

 どの公約も全く実現できていません。しかも誰も責められていません。国民の期待もあまり大きくなかったからでしょう。だからデジタル政策は他の政策より優先順位が低かった。

 光ファイバー網や携帯電話のカバレッジといった通信インフラだけ見たら、日本はどの国にも負けていません。せっかく良質なインフラがあるのに、新型コロナという事態でうまく使い切れなかった。日本ほどの通信インフラを持たない国がITで成果を上げたのに、日本は過去のインフラ投資やIT戦略が全く役に立たなかった。「敗戦」以外の何物でもありません。

敗戦の原因は。

 結局、供給側が発想したデジタル化であって、国民起点でデジタル化を考えていなかった。反省すべき点です。

 今進めている「縦割り打破」はまだ管理者の発想です。国民からすれば、受けたい行政サービスをどの省庁が提供しているかは関係ない。「何省だ」と意識することこそが行政サービスのUI(ユーザーインターフェース)やUX(利用者体験)を悪くしているのです。

 今までスマートシティーにしろデジタルガバメントにしろ、上(中央政府)から下(国民)に下ろす構造になっていました。デジタル庁ではそれらを全て国民起点に書き換えます。

アーキテクチャーまで踏み込む

具体的には何が課題でしょうか。

 個別の最適化は結構できていたと思います。政府CIO制度や内閣官房IT総合戦略室などを設け、個別のシステムに助言するようにした結果、システム運用コストを約3割減らせる見込みです。ただ根本的なシステムの基本構造を見直すところまでは難しかった。

 政府のIT システム予算は年間約7000億円あります。このうち3000億円が新規システム投資などで、4000億円が維持管理です。この構造を大転換するには、あるべきアーキテクチャーを整理したうえで、最終的にその姿を実現することが望まれます。