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 Zホールディングスの川辺健太郎社長は2020年9月9日、Twitter上で「デジタル庁・私案」を発表した。日本が「公共部門のデジタル後進国」を脱するには「住民主語のデジタル化」を進めることが最も重要だと説く。2020年に入って公共部門のデジタル化について積極的に発言する真意は(2020年10月7日にインタビューを実施)。

(聞き手は外薗 祐理子=日経クロステック/日経コンピュータ)

川辺 健太郎Zホールディングス社長CEO(最高経営責任者)、一般社団法人日本IT団体連盟会長
川辺 健太郎Zホールディングス社長CEO(最高経営責任者)、一般社団法人日本IT団体連盟会長
1974年生まれ。大学在学中の1995年に電脳隊を設立。2000年ヤフー入社、2018年社長CEO。2019年に持ち株会社制に移行し、社名をZホールディングスに変更した。(写真提供:Zホールディングス)
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デジタル庁に何を期待しますか。

 日本の公共部門における「デジタル後進国」や「デジタル敗戦」と言われる状況を打開して、日本に住む人や在外日本人といった行政サービスを受ける側の視点に立ったデジタル化の仕組みを作り、サービスを提供することを主導してほしいですね。

2020年9月9日、Twitter上で「デジタル庁・私案」を発表しました。

 最初に「デジタル庁創設の目的は第一に日本に住む人のウェルビーイング(幸福)の増進」と書きました。行政組織を住民にサービスを提供する組織と捉えれば、住民にいいことがあるようにしてもらいたいですね。国や地方自治体を主語にするのではなく「住民主語のデジタル化」を進めることが一番重要だと思います。

マイナンバーカードにつきまとう物理的な制約

マイナンバー制度についてはどう思いますか。

 行政のデジタル化における最大のメリットは、これまでのような最大公約数を想定したサービスから、個々人の実情に合わせたワンツーワンのサービスを提供できるようになる点にあると思います。

 民間企業は、例えばヤフーなら「Yahoo! JAPAN ID」、LINEなら「LINE ID」のようにIDを使って個人を認証し、個人ごとのデータを蓄積しています。行政も何かしらのIDを使って個人を認証し、個人ごとのデータを蓄積し、そのうえでワンツーワンのサービスを届ける必要があるでしょう。その点でマイナンバー制度には期待しています。

 IDに関するメリットの理解が進まず、「行動を把握されてしまうのではないか」といった漠然とした恐怖心があって、多くの国民がまだマイナンバーカードを作っていないのは課題だと思います。(マイナンバーカードの普及率は2割程度であり)私はマイナンバーカードを使っている2割の方の人間ですが、使い勝手が非常に悪いのは問題ですね。

「マイナンバーカードをアプリにしたらどうか」とTwitter上で提案しています。

 スマホ決済サービスの「PayPay」を提供している立場から言うと、我々はクレジットカードのプラスチックカードや紙幣といった物理的なモノをできる限りなくそうとしています。物理的なモノには物理的な制約が必ず生じるからです。アプリにすれば物理的な制約はなくなってより便利なサービスが提供できると思います。

 先日、自分のマイナンバーカードの電子証明書を更新するために役所に行きました。アプリで更新すれば出向く必要もなくなりますよね。政府はこうした点もデジタルで解決する方向でマイナンバー制度をアップグレードしてほしいと思います。

行政サービスは自らの仕事のしやすさを重視しがち

行政のデジタル化における官民連携の在り方は。

 当社は約25年間、様々なインターネットのサービスを提供してきました。私自身もインターネットでサービスを提供する起業家としてキャリアをスタートしました。インターネット業界の人が何にこだわっているかというとUX(ユーザー体験)です。

 言い換えるなら、使い勝手の良さです。オフラインでのサービスを展開している企業よりもUX向上にこだわり、様々な技術開発をしてきたという自負があります。なぜなら、ネットの世界では使い勝手が悪ければ簡単に他社のサービスに乗り換えられてしまうからです。

 その点、行政サービスは独占であり他に乗り換えられる心配がありません。住民の利便性の向上よりも、自分たちの仕事のしやすさを重視しがちな構造と言えます。