2021年秋に開催が予定される「三重とこわか国体」(体操・新体操・トランポリン・空手道およびサッカー)の会場計画だ。約28.5ha(28万5000m2)ある三重県四日市市の「中央緑地」全域を再整備する。
ここにはもともと広い緑地のほかに、野球場やプールがあった。それらを解体し、新たにスポーツ施設をつくった。中核となるのが「四日市市総合体育館」だ。
総合体育館内には、約3500人の観客席を持つアリーナや弓道場がある。さらに敷地には、陸上サブトラック、アメリカンフットボール場、ラグビー場をそれぞれ有するサッカー場が3面、そして850台(予定)分の駐車場を整備する。陸上競技場と第2体育館は、既存の施設をそのまま利用している。
中央緑地の中心に立つ建築物は、市民の「活動と憩いの場」になる必要があった。周りに設ける広場や公園、屋外のスポーツ施設(フィールド)を結ぶ役割があるからだ。
そこで中央緑地内の全施設をつなぐ弓形の大屋根を、総合体育館の前面に架けた。長さは170mある。この大屋根は深い軒を持つ、庇(ひさし)空間になっている。
多目的室の大屋根が全施設をつなぐ
中央緑地全体の再整備を設計するに当たり、全てのスポーツフィールドが互いに関係性を持ち合う環境をイメージした。そして、「ここでしかできないコト」「ここにしかできない場所」をつくりたいと考えた。
メインアプローチとなる敷地西側の国道1号から、北東にある近畿日本鉄道の新正(しんしょう)駅に抜ける「弓形プロムナード」を緑地内に走らせた。総合体育館にあるアリーナや弓道場、さらに複数の広場やスポーツフィールドが全て、弓形プロムナードからアクセスできるように配置している。前述の170mの大屋根は、弓形プロムナードに沿うように架かっている。
再整備する中央緑地は、以前からここにあったことを感じさせるものでありたかった。それでいて、個性を発揮する。建築物やスポーツフィールドを取り巻く環境が一体になって、この場所が活性化されている状態を目指した。
総合体育館はアリーナだけでなく、中央緑地全体の休憩所とロビーを兼ねた「スポーツフォーラム」、各スポーツフィールドと連携して利用できる「多目的室」、その屋上にある「スカイストリート」「スカイガーデン」などで構成している。
ランドスケープは弓形プロムナードを介して、建築物と「市民ひろば」「芝生ひろば」、そしてスポーツフィールドが互いにつながりを持って広がっていく。