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 バイクを愛してやまない友達と2人で、北米を2週間かけてツーリングした。1995年のことだ。

 国定公園を中心に巡りながら、ネーティブアメリカンの住居遺跡を数々目にしてきた。広大な土地に溶け込み、自然と共生する暮らしの痕跡が、そこにはあった。

 「野辺山の住処(すみか)」のプロジェクトは、この旅から始まった。「北米大陸の世界観を共有したうえで、住宅を設計してほしい」。それが建て主である友人の要望だった。

 大好きなバイクでアプローチしやすく、数台を収納できるバイク置き場があることが条件に挙がった。

 敷地がある長野県南牧村の野辺山エリアは、標高が約1380m。冬には気温がマイナス20℃になることもある寒冷地だ。手つかずの自然が残り、近くには縄文時代の竪穴住居跡も見つかっている。大昔から人々が暮らしてきた場所である。

 建設予定地はそんな森の中にあり、目の前を小川が流れている。この景色を取り込む住宅が、まずイメージとして頭に浮かんだ。

 しかし、設計はなかなか進まなかった。最初は直線的な建物をつくろうとしていたのだが、どうしても周りの景色と調和しない。違和感がある。精密な模型を幾つも製作し、試行錯誤を繰り返した。

うねるような形をした大屋根が森の中に突如現れる。屋根の色は黒、外壁も焼きスギ張りの焦げた黒で統一した。自然に溶け込むように、色を抑えている(写真:吉田 誠)
うねるような形をした大屋根が森の中に突如現れる。屋根の色は黒、外壁も焼きスギ張りの焦げた黒で統一した。自然に溶け込むように、色を抑えている(写真:吉田 誠)
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