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 最近、勾配屋根が連なる屋並みの風景を見かける機会が少なくなった。歴史的なエリア以外でこのような景色に出くわすのは決まって、山あいを車で走っているときである。自然が織り成す風景を見て感動するのは、人工物である建築と自然が互いに寄り添った姿をしているからだろう。

 そして勾配屋根が架かった民家の形態と自然とが調和した風景に、日本人は美しさを感じる。同時に、どこか安堵感を覚えるものだ。

新たな勾配屋根による空間づくり

 今回のプロジェクトである「間∧屋(ま∧や) Butterfly」は、私にとっての“屋根”という言葉を新たに考え直したものである。これまでは空間領域という、人が関わりを持てる範囲を拡張させる要素として境界に着目してきた。床や壁、屋根を細かく分けることで、外部環境との緩やかなつながりを実現し、建築とランドスケープを一体的に考えている。

 そして軒や庇(ひさし)、縁側といった日本建築のエッセンスを再解釈することで、新たな日本建築とでもいうべき現代的な空間を取り込むことに注力してきた。

 とりわけ、屋根についていえば、フラットな陸屋根の構成が多くなる中、今回は敷地周辺のコンテクストから勾配屋根という形態を導いて、空間領域の抑揚と拡張性の可能性を追求した。

 建て主は、棟方志功や藤田嗣治の書画や、大樋長左衛門や清水卯一の器など、様々な作品を保有するコレクターだ。その展示ができる住まいを依頼された。

 イメージとしては、伝統的な和風建築でありながら、新たな建築空間も兼ね備えたものだ。また、装飾的な和ではなく、数寄屋建築の軽妙洒脱な感覚を建て主は求めていた。

 敷地は、瀬戸内海の島々が点在する湾から程近い場所にある。もともと自宅があった土地で、隣地も購入して約800m2の大きな敷地にした。ここに自宅を建て替える計画である。

 敷地周辺は一見雑多な、どこにでもある街並みだ。しかし、勾配屋根のデザインコードが街にあるかのように、住宅からアパート、マンションに至るまで、勾配屋根によるのどかで心地よいスカイラインを形成する風景がそこには存在した。私はこれを取り入れたいと考えた。

勾配が異なる切妻屋根が折り重なるように見える住宅(写真:藤井 浩司=ナカサアンドパートナーズ)
勾配が異なる切妻屋根が折り重なるように見える住宅(写真:藤井 浩司=ナカサアンドパートナーズ)
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周辺に広がる勾配屋根の住宅となじみながら、新しいスカイラインを形成した(写真:藤井 浩司=ナカサアンドパートナーズ)
周辺に広がる勾配屋根の住宅となじみながら、新しいスカイラインを形成した(写真:藤井 浩司=ナカサアンドパートナーズ)
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