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 ハードとソフトの本格的な分業は、今後の技術開発の主戦場である自動運転に欠かせない。自動車メーカーが過去に培ってきたハード開発の経験は、全く通用しなくなる。一方で、ソフトやセンサー、認識技術に強い企業には新規参入の好機だ。先頭を走る米Google(グーグル)系企業を追いかける米Intel(インテル)傘下のイスラエルMobileye(モービルアイ)やソニーは、積極的に分業して開発を加速する。

 センサーを含む認識技術に強い企業が自動運転ソフトの開発で優位に立つことの証左が、Mobileyeが存在感を急激に高めていることだ(図1)。レベル1~2の運転支援で躍進したMobileyeが、レベル4~5の自動運転で「(Googleから独立した)米Waymo(ウェイモ)を追いかける有力企業」(国内自動車メーカー幹部)とみられるまでになってきた。

図1 Mobileyeが自動運転ソフト開発で躍進
図1 Mobileyeが自動運転ソフト開発で躍進
イスラエルで走らせている実験の様子。(出所:Mobileye)
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 Mobileyeは、強みのある認識ソフトとSoC(System on a Chip)「EyeQシリーズ」を組み合わせて提供することで、運転支援技術で多くの受注を獲得した(図2)。イメージセンサーについては自ら手掛けないが、長年米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)製を採用しており、事実上、センサーと認識ソフトを一体で開発してきた形だ。

図2 Mobileyeは高精度地図を内製
図2 Mobileyeは高精度地図を内製
Waymoと同じ戦略で、他社から調達する競合他社に比べて優位に立てる。(出所:Mobileye)
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 そんなMobileyeがWaymoを猛追できるのは、同ソフトの基盤となる高精度地図データ「REM(Road Experience Management)」を自ら開発することが大きい。Waymoと同じように高精度地図データを中核と位置付けて、競争領域と考える。これを分業するのではなく、統合する。高精度地図データを内製する企業は少ない。他社から調達する競合に比べて、開発速度を上げられる。

 MobileyeがREMを手掛けられるのは、走行中の車両から集めた大量の道路情報などを認識して解析し、地図データの開発で最も重要な頻繁な更新を実現する基盤を既に有するからだ。同社のSoCを搭載した車載カメラが既に多くの車両に採用されていることが大きい。

 センサーと認識ソフトの強みを生かして自動運転ソフトでWaymoを猛追するMobileyeは、ソニーの目指す方向をいち早く体現した企業と言えそうだ。なおソニーとMobileyeで異なるのは、ソニーはSoCや高精度地図データまで内製する考えはなく、分業を重視すること。SoCの分業についてはWaymoの考えに近く、同社はIntel製コンピューターを採用しているとみられる。