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 東京・日本橋兜町。明治期に株式会社が生まれていった際の中心地で、日本の近代化を象徴する場所として長い歴史を刻んできた。ごく小さな街区だが、かつては「証券街」「株の街」として知名度は全国的だった。

 象徴的存在だった東京証券取引所(以下、東証)の立会場が1999年に閉場。株取引のオンライン化が一般化し、街の雰囲気も変わった。日本橋川や首都高速道路の高架、アンダーパスのある昭和通りなどに囲まれる一帯は通過動線も少なく、昼間でも通りを歩く人はまばらだ。

 兜町を拠点とする平和不動産は、東証設立に先立ち、証券取引所の各建物を所有・管理する会社として47年に生まれた。現在は、東京、大阪、名古屋といった証券取引所ビルを所有するほか、デベロッパーとして一般のオフィスや住宅の開発も手掛ける。近年は兜町周辺の不動産取得を進め、再開発を通じた街づくり、エリアの再活性化を指向する。

 「証券マンが闊歩(かっぽ)した、かつてと同じ街ではなく、新しいにぎわいの創出が中期経営計画の目標の1つになった。オフィステナントだけでなく、路面の風景や行き交う人々を多様にしたいという思いがある」と平和不動産ビルディング事業部課長代理の山根拓馬氏は語る。

「K5」の入る兜町第5平和ビルの東側外観。右手奥がエントランス。1階外壁では、あえて破損箇所を残すなど、建物の歴史を感じられるように改修・デザイン処理を施している(写真:山本 育憲)
「K5」の入る兜町第5平和ビルの東側外観。右手奥がエントランス。1階外壁では、あえて破損箇所を残すなど、建物の歴史を感じられるように改修・デザイン処理を施している(写真:山本 育憲)
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創建時のファサードに戻す

 2020年2月に開業した「K5(ケーファイブ)」は、そうした流れの第1弾となるプロジェクトだ。築100年近い歴史のあるビルを、ホテルと飲食店の複合施設にリノベーションした。同社開発推進部課長代理の伊勢谷俊光氏は、「新たな来街者を増やすための目的地になり得る場所が必要だった」と開発の狙いを話す。

2020年2月開業の「K5」4階にある客室「ロフト」。80m<sup>2</sup>の空間にキングサイズのベッドやオリジナルのソファ、ダイニングテーブルなどを配置。4.5mある天井高を生かした、ゆったりとした空間だ。右手奥にバスルームがある(写真:山本 育憲)
2020年2月開業の「K5」4階にある客室「ロフト」。80m2の空間にキングサイズのベッドやオリジナルのソファ、ダイニングテーブルなどを配置。4.5mある天井高を生かした、ゆったりとした空間だ。右手奥にバスルームがある(写真:山本 育憲)
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「K5」4階にある客室「ロフト」のベッド周り。テレビはなく、キュレーターの選んだ本を置いている(写真:山本 育憲)
「K5」4階にある客室「ロフト」のベッド周り。テレビはなく、キュレーターの選んだ本を置いている(写真:山本 育憲)
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 建物は、同社が15年に取得。当時は外壁3面が鋼板パネルで覆われてしまい、創建時の姿は分からなくなっていた。「図面も存在せず、調べるうち設計者をはじめ建物の“素性”が分かってきた。パネルの下には趣のあるファサードが残っていた」(伊勢谷氏)

 17~18年には、三菱地所設計が設計を担当し、耐震補強を中心とする大掛かりな改修を実施。デザイン監修を建築家の宮部浩幸氏(SPEAC:スピーク)に依頼し、単なる補強や性能向上に終わらせず、元の建物のたたずまいや細部の魅力をリノベーション後の空間に反映できるような工事としている。

関東大震災後に撮影された写真。国内最初の銀行である第一銀行の別館として建設された(写真:清水建設)
関東大震災後に撮影された写真。国内最初の銀行である第一銀行の別館として建設された(写真:清水建設)
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改修工事では外壁を覆っていた改装用のパネルを下地ごと撤去(写真:平和不動産)
改修工事では外壁を覆っていた改装用のパネルを下地ごと撤去(写真:平和不動産)
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約10m×44mの矩形平面の妻部分とコアの一部を耐震壁で補強した。レンガ組積造の既存壁面を撤去し、コンクリートを増し打ちしている。構造評定を取得し、現行法規に対応する性能を得ている(写真:平和不動産)
約10m×44mの矩形平面の妻部分とコアの一部を耐震壁で補強した。レンガ組積造の既存壁面を撤去し、コンクリートを増し打ちしている。構造評定を取得し、現行法規に対応する性能を得ている(写真:平和不動産)
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 K5としての内装工事は19~20年に実施。1階にホテルのフロントの他、レストラン、カフェ、ライブラリーバー、地下1階にビアレストランを置き、2~4階をホテル客室とした。全体のインテリアデザインをストックホルムのCKR(Claesson Koivisto Rune:クラーソン コイヴィスト ルーネ)が手掛けている。

 1階では、改修時に付け替えた大きなフィックス窓や現しの躯体など建物自体の存在感を生かしている。対して、内装の造作は控えめな印象のものとした。グリーンを随所に配し、“親自然的”なイメージの店舗空間を指向している。

 客室では、シンボリックな和紙照明をはじめ、紗(しゃ)を思わせる仕切りカーテン、木質の壁や引き違い戸など、日本的な要素を多用した。「インターナショナルファイブスターでは飽き足りない、独自性のある体験を求める顧客層を想定している」(伊勢谷氏)

「K5」エントランス前からホテルフロントを見る(写真:山本 育憲)
「K5」エントランス前からホテルフロントを見る(写真:山本 育憲)
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「K5」4階の廊下。軽やかな内装と重厚な建築の対比を強調し、施設全体にグリーンを配している(写真:山本 育憲)
「K5」4階の廊下。軽やかな内装と重厚な建築の対比を強調し、施設全体にグリーンを配している(写真:山本 育憲)
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「K5」4階の廊下。曲げ木を思わせる壁面処理と銅板を用いた客室扉(写真:山本 育憲)
「K5」4階の廊下。曲げ木を思わせる壁面処理と銅板を用いた客室扉(写真:山本 育憲)
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