本特集では、これから2021年にかけて登場するPCのCPUやストレージ、インターフェース、グラフィックスなどのスペックを予測する。今回は最新のCPU事情をまとめた。
2020年秋に、米Intel(インテル)の最新世代CPUを搭載したノートPCが登場し始めた。また米AMD「Ryzen」の躍進が続いており、状況は大きく変化してきている。
モバイルPCを変える「Tiger Lake」
これから2021年にかけて最も注目したいCPUは、開発コードネーム「Tiger Lake」こと「第11世代Coreプロセッサー(モバイルPC向け)」だろう。
第10世代Coreプロセッサー(開発コードネームはIce Lake)からの大きな進化ポイントは3つある。まず、新しいマイクロアーキテクチャーである「Willow Cove」は、先代(Sunny Cove)と比べて、大幅に高い周波数で動作しやすくなった。また、10nmをさらに改良して電力効率を高めた「10nm SuperFin」プロセスルールを採用。内蔵GPUは、完全新規設計の「Iris Xe Graphics」となっている。
これにより、第10世代Coreプロセッサーに比べてCPU性能は20%以上向上。グラフィックス性能は最大2倍に、AIの処理性能は最大で5倍に向上しているという。これにThunderbolt 4(USB 4と完全互換)とPCI Express 4.0の統合という新要素も加わり、プラットフォームレベルでは大きな進化を遂げている。
オペレーティングレンジでPCはより自由なスタイルに
さらに、従来TDP(Thermal Design Power)とcTDP(Configurable TDP)で示していた熱設計の基準を「オペレーティングレンジ(OR)」と改めたのも注目点だろう。
TDP(ORも同様)は周波数ブーストと連動しており、基本的にはTDP(OR)の数値が高いほど、高い周波数で長い時間動作できる(パフォーマンスが上がる)が、高い放熱能力が必要となる。放熱能力はボディーの大きさや重さ、コストに密接に関わってくるために、TDPが固定だとどうしても似たようなスタイルになりがちだ。そこで、メーカーがTDPの値を柔軟に変更して性能や熱設計を最適化できるよう導入したのがcTDPである。
ORにおいては、従来の「TDP15W、cTDPアップ25W、cTDPダウン10W」という表記のしかたから「12~28W」というように範囲のみで示すようになった。実のところは表記のしかたを変えただけだが、TDPという標準の値をなくしたことで、標準のTDPに縛られることなくより柔軟な設計を促す狙いがあるとみられる。
これまで以上に、「同じCPUを搭載していても実際に発揮できる性能が異なる」という状況が増えると予想される。そのためPCの性能は、CPU名だけでなくPCの製品単位で判断する必要性が出てきそうだ。
Tiger Lakeの進化のほどは、搭載製品が物語っている。富士通クライアントコンピューティングの「LIFEBOOK UH-X/E3」は、13.3型ワイド液晶搭載ノートPCの世界最軽量(同社調べ)を大幅に更新し、634グラムとなった。中国Lenovo(レノボ)からも高性能高機能でありながら1キロを切る「ThinkPad X1 Nano」が海外で発表されるなど、各社から意欲的な新製品が続々と発表されている。