インテルが力を入れるOptaneストレージの行方は?
SSD事業でも大手の一角であるインテルは、NANDフラッシュメモリーとは別の「Optane メモリーメディア」を利用したストレージ製品に力を入れている。
Optane メモリーメディアは、NANDフラッシュメモリーに比べてランダムアクセスのレイテンシーが短く、書き込みに対する耐久性は高いことが特徴だ。書き換え回数はSLC NANDフラッシュメモリーの1000倍にのぼる。一方、高コストで大容量化が難しいという弱点も抱えている。
インテルは、Optane メモリーメディア搭載デバイスを「Optane SSD」や「Optane メモリー」として展開している。前者はOptane メモリーメディアをそのまま記憶媒体として利用したSSD。後者のOptane メモリーは、HDDのキャッシュとして使うことを前提とした小容量のSSDである。HDDと組み合わせて使うと比較的低いコストでSSDに近いレスポンスと大容量を両立できるため、一般用途向けの大画面ノートPCやデスクトップPCなどで採用されている。
なおインテルは2020年10月、韓国SK hynixにNANDフラッシュメモリー事業を売却することを明らかにしている。Optane事業は継続するということだが、この動きがOptane SSDやOptane メモリーにどう影響するのか注目していきたい。
HDDの大容量化は今後も継続
PCのメインストレージとしては使われなくなったHDDだが、大容量データの保存/管理やバックアップ用途での需要は健在だ。ゲーミングPCやクリエーターPCのサブストレージとして搭載されたり、一般用途向けデスクトップPCにOptane メモリーとの組み合わせで使われたりしている。NAS(Network Attached Storage)などで利用している人も多いだろう。
HDD選びの際にキーワードとなっているのが、CMR(Conventional Magnetic Recording)とSMR(Shingled Magnetic Recording)だ。いわば普通の記録方式であるCMRに対し、SMRは記録密度を向上させるための比較的新しい技術で、トラックの間隔を読み出し可能な限界ぎりぎりまで狭めて記録する。読み出しヘッドよりも書き込みヘッドのほうが大きいことから、内周トラックの一部を上書きしてしまうのが特徴だ。
SMRは、CMRに比べて記録密度を向上させられるため低コストで大容量化を実現しやすい。一方で、書き換えの際にはエリア単位(記憶領域全部ではなく幾つかのエリアに分割されている)で全部書き直しとなるためロスが大きく、頻繁に書き換えを行う用途には向かない。
この仕組みからSMRを敬遠する向きもあるが、最近のHDDはOSのシステムドライブに採用されることはほとんどなく、データの長期保存やバックアップ用途に限定されていることが多い。容量にある程度余裕をもって使う限り、頻繁に書き換えが起こることはほぼない。また、大容量のDRAMキャッシュ搭載やメディアキャッシュ(SMRでない記録領域)を用意するなど技術面でも工夫されており、通常利用ではSMRだからといって使用感に影響が出ることはない。
「ヘリウム充填」もよくスペックに記載される。これは磁気ヘッドの精度を向上させるために、空気よりも分子密度が低いヘリウムガスを充填したHDDである。10Tバイト以上の大容量モデルは、ほぼヘリウム充填だ。
大容量化については、⽶Seagate TechnologyがHAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording)、Western DigitalがEAMR(Energy-Assisted Magnetic Recording)というブレークスルーとなる技術の開発を進めており、第1弾モデルをそれぞれ発表している。SeagateはHAMRを搭載した20Tバイトのモデルを2020年12月に発売すると説明している。