PCは様々なインターフェースを搭載している。その中で目立っているのはUSB Type-Cだ。順調に普及が進んでおり、2021年も同じ傾向になると思われる。USB Type-Cが多用途に対応できるため便利である一方、同じ形状でも機能が違うために混乱もある。ここではUSB関連規格を含め、PCのインターフェースが今後2021年にかけてどのようになっていきそうかを整理しよう。
モバイルPCで普及進むUSB PD
下の表にUSB規格の通信速度をまとめた。
USB規格 | 世代 | 通信速度 | 備考 |
---|---|---|---|
USB 2.0 | - | 480Mビット/秒 | - |
USB 3.2 | Gen 1 | 5Gビット/秒 | USB 3.0策定時の最高速度 |
Gen 2 | 10Gビット/秒 | USB 3.1策定時に追加され、5Gビット/秒がGen 1、10Gビット/秒がGen 2とされた | |
Gen 2x2 | 20Gビット/秒 | USB 3.2策定時にデュアルレーンのサポートが追加された | |
USB4 | Gen 2 | 10Gビット/秒 | - |
Gen 2x2 | 20Gビット/秒 | - | |
Gen 3 | 20Gビット/秒 | オプション、USB4認証ケーブル必須 | |
Gen 3x2 | 40Gビット/秒 | オプション、USB4認証ケーブル必須 |
通信速度に関しては「USB 3.1」「USB 3.2」といった規格のバージョン表記ではなく、「Gen 1」「Gen 2」といった通信速度の世代表記を判断材料とするのが確実だ。
またUSB 3.2以降、デュアルレーン動作(2組の信号線を使うことで転送速度を2倍にする)が可能になったため、デュアルレーン動作については「x2」と表記するのが基本である。
USB4からは「Gen 3」の速度(1レーン当たり20Gビット/秒)が加わっているが、これはオプションとなっている。そのためGen 3動作に対応しているかどうかは、個別に確認する必要がある。
USBのベース仕様(3.2や2.0などの基本仕様)には、データ信号と同時に電源を供給できる「バスパワー」という仕様があらかじめ含まれている。USB 2.0は2.5Wまで、USB 3.2は4.5Wまで供給可能だ。USB Type-C利用時のみ、「Type-C Current」として少し大きめの電力(最大15W)が供給できる。USB4の場合、ベース仕様は電源供給について規定されていない。ただしUSB4はUSB Type-Cが前提の仕様であるため、実質的に最大15Wを供給できる。
これとは別に、電源供給を目的とした拡張仕様として、古くは「USB Battery Charging(USB BC)」があり、最近だと「USB Power Delivery(USB PD)」が規定されている。USB PDは最大100Wまでの充電と給電が可能なため、多くのモバイルノートPCがこれを活用して、PCを充電できるようにしている。
USB PDに対応したPCは、同じくUSB PDに対応したACアダプターやモバイルバッテリーなどを使って充電できる。ただし、メーカーは自社製品以外での動作を保証していない。それでも、モバイル環境においていざというときに汎用品が使える安心感が得られる。またUSB PD対応液晶ディスプレーと組み合わせれば、Type-Cケーブル1本で画面出力とPCの充電を同時にするといった先進的な運用ができる。
USB PDは、USB4やUSB 3.2などのベース仕様から独立した拡張仕様である。Type-CポートがUSB PDに対応しているかどうかは、個別に調べる必要がある。モバイルPCのUSB PD対応はメリットが大きく、多数の製品で採用されている。
仕様 | 方向 | 最大容量 |
---|---|---|
USB 2.0 | 給電(PC→周辺機器) | 2.5W |
USB 3.2 | 給電(PC→周辺機器) | 4.5W |
USB Battery Charging 1.2 | 給電(PC→周辺機器) | 7.5W |
USB Type-C Current | 給電(PC→周辺機器) | 15W |
USB Power Delivery | 充電(周辺機器→PC) 給電(PC→周辺機器) | 100W |
Alternate Modeでディスプレー出力を実現
USB Type-Cのディスプレー出力機能は、「Alternate Mode(Alt Mode)」という拡張機能を使って実現されている。
この機能を利用するものとして、Thunderbolt 3とThunderbolt 4のほか、DisplayPort信号を流す「DisplayPort Alt Mode」、HDMI信号を流す「HDMI Alt Mode」、VR用HMD(ヘッドマウントディスプレー)用のインターフェースとして期待されたDisplayPortベースの「VirtualLink」などがある。ただしThunderbolt系とDisplayPort Alt Mode以外は製品化が進まず、フェードアウトしている状況である。
USB Type-Cでディスプレー出力を利用する魅力は、USBのデータ転送機能ともUSB PDとも共存できることにある。例えば、外付けディスプレーとノートPCの両方がDisplayPort Alt ModeとUSB PDに対応し、外付けディスプレーがUSBハブ機能を搭載していれば、画面出力とノートPCの充電、そしてUSBハブによるマウスやキーボード、Webカメラの接続などをUSB Type-Cケーブル1本でまかなえる。
実際、このようなドッキングステーション的な運用ができる外付け液晶ディスプレーは豊富に出そろっている。在宅ワーク環境を快適にする有力な方法として注目されている。
インターフェース名 | 伝送可能な映像信号 |
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DisplayPort Alt Mode | DisplayPort 1.2/1.4/2.0 |
Thunderbolt 3 | DisplayPort 1.2/1.4 |
Thunderbolt 4 | DisplayPort 1.4 |