米Apple(アップル)は2020年10月23日、新型「iPhone 12」シリーズ4機種のうち2機種となる「iPhone 12」と「iPhone 12 Pro」を先行して発売した。日経クロステック編集部では「新型iPhone全機種分解」企画コラムのために、この2機種を購入した。新機種を発売と同時に購入し分解・分析するのがもはや毎年の恒例行事となっている。まずは分解前に新機能であるiPhone 12 ProのLiDARセンサーを中心に調べてみた。
iPhone 12とiPhone 12 Proは、メモリー容量や内蔵ストレージ容量が異なるものの、外形寸法やプロセッサーの品種などは同一である。大きく異なるのは、背面カメラの個数とLiDAR(Light Detection and Ranging)用センサーの有無だ。背面カメラは、iPhone 12が超広角と広角の2つなのに対し、iPhone 12 Proはこれらに望遠を追加した3つになる。さらに、LiDAR用センサーがiPhone 12 Proに新搭載され、“4眼”のようになっている。
LiDARはiPad Proより省電力化か
iPhone 12シリーズで注目すべきは、やはりこのLiDARである。Appleは、2020年3月に発売した2020年版「iPad Pro」に初めてLiDARを搭載した。合計576点の赤外線光を照射して、壁などの物体で反射した光をCMOSイメージセンサーで検知し、それぞれの点における距離を測っている。
iPhone 12 ProのLiDAR用センサーは、iPad Proのそれとほぼ同じ機能を有するとみられる。例えば、LiDARの照射パターンは、iPhone 12 ProとiPad Proで同一だった。
ただし、iPhone 12 Proで変わった部分もある。LiDARの照射パターンの発光タイミングである。赤外線カメラで照射パターンを観察したところ、iPad Proでは赤外線光の撮影時に常時すべての点が同時に照射されているように見える(視認できないほどの極めて短い間隔で照射タイミングがずれている可能性はある)が、iPhone 12 Proでは列ごとに照射タイミングをずらすように制御されているのが視認できた。iPhone 12 ProはiPad ProよりもLiイオン2次電池の容量が少なくなっているため、省電力化を意識したのではないかと推測する注1)。