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 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の世界的な流行で、経済はリーマン・ショックを上回る打撃を受けた。一方で、環境の改善により美しい地球が戻ったとの報道もある。増え続けていた二酸化炭素(CO2)も、2020年は前年比8%の減少が予測されている。人類の経済活動がいかに環境を傷め続けてきたかを多くの人々が認識したのである。

 ウイルスと地球温暖化は無縁ではない。極地の温暖化は予想以上に進んでおり、北極圏の永久凍土が溶け続ければ、そこに封じ込められた未知のウイルスや細菌が地表に現れるとの指摘もある。

 19年9月に国際連合が主催した気候行動サミットでは、「パリ協定*1の目標である産業革命以降の温度上昇2℃以下では不十分。1.5℃以下を必達目標とすべきだ」との提示があり、多くの国はこれにコミットして具体策を表明した。1.5℃以下を目標とする場合、今後10年間で45%のCO2削減が必要で、それができないと気候危機の連鎖が始まり、人間の手ではもはや制御不能に陥るとされる。

*1 パリ協定 第21回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)にて採択された気候変動に関する国際的枠組み。各国がCO2削減目標を作成・提出し、対策を取ることが義務付けられた。

 自動車業界を含めて全ての業界が真剣に対応しないと、自然災害とウイルスまん延の脅威が増し、経済成長どころではなくなる可能性を我々は認識しなければならない。こうした状況の中、将来の電動車やエンジン用燃料に関して「現実解」に向けた動きが出てきた。

電動化と燃料の脱化石化はセットで

 図1に、2050年に向けてのエンジン車と電動車の構成比の予測を示す。新車の販売台数が40年に1億3000万台(上振れ)となるケースだ*2

図1 自動車のセールスミックスと燃料の多様化対応
図1 自動車のセールスミックスと燃料の多様化対応
2050年に向けたエンジン車と電動車の構成比を予測した。新車の販売台数が2040年に1億3000万台になるケースを基にしている。(作成:筆者)
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*2 下振れのケースは記載していないが、カーシェアリングによる乗用車販売の減少で2040年に1億1000万台と予測した。

 30年における世界販売は、68%がエンジン車で、32%が電動車となる。電動車のうち、大半はストロングハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)が占める。エンジン車およびエンジンを搭載するHEVやPHEVの燃料に関しては、石油系燃料からバイオ燃料やPTL燃料(合成液体燃料)*3、カーボンフリー燃料(水素)への転換が必須となる。

*3 PTL燃料 Power to Liquid燃料。再生可能電力を利用し、水素と大気中のCO2から製造する合成燃料。

 実は、これは筆者が提唱してきた「あるべきシナリオ」であり、新型コロナの影響によって現実がそれに近づいてきた感がある。すなわち、行き過ぎた電気自動車(EV)戦略を修正する動きと、エンジン用燃料の低炭素化の動きが、遅まきながらこのコロナ禍で表れ、結果としてあるべきシナリオに向かっているのだ。

 図2は、このあるべきシナリオをベースに保有車のエネルギー消費量と各エネルギーの割合(エネルギーミックス)を示したもの。50年における世界保有車の予測は20.1億台(18年は12.5億台)で、技術や燃料が現行のままなら、エネルギー消費量は32.4億t(石油換算)まで増え得る。

図2 2050年における保有車のエネルギー消費
図2 2050年における保有車のエネルギー消費
車両技術の進化と燃料の低炭素化により、エネルギー消費量は15.3億tまで減らせる。石油のエネルギー消費量は5億tまで減少する。(作成:筆者)
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 これに対し、既存のエンジンの効率化と車両の軽量化の進化を考慮すれば、エネルギー消費量は17.8億tと、15年時の20.3億tを下回る。さらに電動化〔HEVとPHEV、EV、燃料電池車(FCV)〕が進めば、エネルギー消費量は15.3億tまで削減できる。ここに燃料の低炭素化が加われば、脱化石燃料エネルギーの割合は67%まで増えることになる。石油のエネルギー消費量はわずか5億tだ。すなわち、石油のエネルギー消費量は20年以降にピークアウトし、50年には15年の20.3億tから75%も減少することとなる。

 さすがにエネルギー資本もおしりに火が付いたのか、ここ2年で水素やバイオ燃料、再生可能エネルギーへの転換に向けた開発の動きを見せ始めている。