いかに本体価格を安く抑えながら、高い性能を実現するか――。米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)は、2020年11月に発売した据え置き型ゲーム機「PlayStation 5(PS5)」の設計において、ここを思案し尽くした。メインプロセッサー(SoC)も例外ではない。SIEが思い描く高性能を実現するために、米AMD(Advanced Micro Devices)の基本回路に加えて、SoCにSSDの高速化と3次元(3D)オーディオのための回路を追加した。一方で、面積をできるだけ小さくしてコストを抑えている。
PS5のSSDは高速だ。非圧縮時でデータ読み込み速度は5.5Gバイト/秒。データ圧縮を施せば、実効値でデータ読み込み速度は約8G~9Gバイト/秒に達する。高速化に向けて、専用のSSDコントローラーICを採用した上、同ICとデータをやり取りするカスタムのI/Oユニット(入出力回路)をSoCに搭載した。同ユニットでは、例えばコントローラーICを通じてPCI Express 4.0で送られてきた、SSD内の圧縮(符号化)データを伸張(復号)する役割を担う。
3Dオーディオに関しては、GPUの「Shader(シェーダー)コア」を基に新たに開発したユニット(コア)をSoCに搭載した。ゲームの場合、場面が目まぐるしく変わり、その画面変化に追従してオーディオの表現を切り替える必要がある。PS4ではオーディオ専用のCPUコアを搭載していた。PS5では並列演算性能に優れた新しいコアを追加することで、「オーディオ処理性能を大幅に高めた」(PS5のハードウエア開発を統括するSIE ハードウェアエンジニアリング&オペレーション担当EVPの伊藤雅康氏)とする。