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 欧米企業の受託業務で成長してきたインドのIT業界。米シリコンバレー企業とてインドのエンジニアや企業なしでは成長がおぼつかない。そして今やスタートアップが次々と生まれ、ユニコーンになる力を付けている。世界におけるインドITの役割は大きくなる一方だ。急成長するインドのテクノロジーエコシステムの現状を現地のR&D系コンサルティング会社に所属する筆者が解説する。

 インドのスタートアップのエコシステム(生態系)は世界第3位の規模で活気があり、繁栄している。インドのIT関連産業団体「全国ソフトウエア・サービス企業協会(NASSCOM)」とコンサルティング会社「Zinnov」が発表した「India Tech Start-up Landscape Report 2019」によると、インドには2014~19年の間に創業したスタートアップ企業が8900~9300社存在し、その数は12~15%の年平均成長率(CAGR)で成長している。鍵となるプレーヤーの存在によって活気はさらに増している。

 19年には、400社以上の積極的な機関投資家、520社以上のインキュベーターやアクセラレーター、そして170社以上の企業が、意義あるビジネスインパクトをもたらすためにスタートアップと深く関わった。同年にインドでは9社のスタートアップがユニコーン(評価額が米10億ドルを超える企業)クラブに仲間入りした。

 新型コロナウイルスによってもたらされた多くの問題にもかかわらず、20年にはインドのスタートアップ7社が神聖なユニコーンクラブへ入り、そのうち4社は感染が拡大する中で実現した。感染拡大はインドのスタートアップのエコシステムを減速させているようには見えない。最近Zinnovが発表したリポートでは、20年時点でインド国内に33あるユニコーンが25年までに100社になると見込んでいる。

 興味深いのは、インドではバンガロール、デリーNCR(首都圏)、ムンバイ、プネ、チェンナイ、ハイデラバードの6都市に少なくとも1つのユニコーンが存在している事実だ。そしてインドのこの急成長の源泉は、B2Bへのシフト、そして外部のイノベーションエコシステムとの提携や協力にある。ユニコーンへの初期参入者の多くはB2Cだったが、今ではユニコーンの半数近くがB2Bのスタートアップである。

 今回は、違う分野に台頭する3つのユニコーンとそのパートナーシップ戦略、他社との連携をテーマに詳しく見ていく。どのスタートアップも堅実に運営する方法を持ち、多くを実現している。

Delhivery、フリップカートのサードパーティーとして発展

 Delhivery(デリバリー)は2011年に創業し、19年にユニコーンクラブに入ったインドのサプライチェーン/物流サービス企業である(編集注、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する企業の1つ)。同社は2300以上の都市で1万7500以上の地域にサービスを提供しており、現在までにインド全土の2億5000万世帯超、7億5000万件の注文を実行した。4万人以上の従業員を擁するDelhiveryは、米小売り最大手ウォルマート子会社のFlipkart(フリップカート)を含む大手EC企業の多くにサービスを提供している。

 フリップカートのグループ企業eKart LogisticsはDelhiveryと直接競合するが、フリップカートはDelhiveryのトップ顧客の1社である。矛盾しているようだが、フリップカートのような大手企業は進化するビジネスの成長局面で、盤石な物流能力を確保したいと考えていることによる。

DelhiveryのWebサイト
DelhiveryのWebサイト
(出所:Delhivery)
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 インドのEC市場は現在640億ドルと推定され、27年までに2000億ドルという驚異的な規模に達すると予想される。この成長は、消費者に商品を届けるために不可欠なDelhiveryのような物流業者にとって大きな機会を意味する。

 ECをシステム構築から顧客への直売、データ管理やサポートまで行う形態「D2C(Direct to Consumer)」が出現し、これに適したビジネスモデルが生まれている中、Delhiveryは独自のD2Cモデルで追従している。

 新型コロナ感染症の影響により街が次々とロックダウンした際、Delhiveryはビジネス運営方法の変化を見て取った。例えば小売りブランドが実店舗とネット通販を融合させるオムニチャネルの手法を採用する一方で、自動化を加速させるといったことだ。実際、Delhiveryはオムニチャネルを通じて取引を可能にし、日用消費財や医薬品などを扱う200社以上の顧客を獲得した。

 新型コロナ禍でサプライチェーンに深刻な影響が出ている。その影響を最小限に抑えるために業務をデジタル化することは、世界が一致を見る意見だ。D2Cと、受注や配送が限定的地域で行われるハイパーローカル(地域密着型)アプローチが受け入れられる中、Delhiveryはダイレクト・トゥ・リテールモデル(小売り直接販売。小売業者が製品のライセンサーと直接契約し、製品の販売者となる)と日用消費財の会社や医薬品会社へのラストマイル配送を強化してきた。同社はコストを抑えつつ、最短2~3時間、または4時間で顧客への配送を実現するために、事業モデルを転換する必要があった。