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 ジョブ型の人事制度について、ビジネスパーソンの約6割が「管理職の評価能力」に不安を抱いている――。働き方改革の最新動向を探る調査でこんな結果が出た。調査結果を分析する特集の第5回は、前回に引き続きジョブ型人事に関するビジネスパーソンの意向を見ていく。

 日経BP総合研究所 イノベーションICTラボがWebサイトを通じて「働き方改革とジョブ型人事制度に関する動向・意識調査」を実施した。日経BPのデジタルメディアの読者・会員を対象に、テレワークの実態やジョブ型人事への意向などについて聞いた。

  ジョブ型は仕事の内容をあらかじめ決めて達成度合いを見る人事制度だ。職務別に仕事の内容と必要なスキルなどを定義し、職務に見合うスキルを持つ社員をアサインする。新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークなど場所にとらわれない働き方が広がり、ジョブ型の人事制度に注目が集まっている。

 調査で「ジョブ型の人事制度には、どのような短所があると思いますか」と質問したところ、「管理職の評価能力に不安がある場合は、適切な運用が難しい」が59.7%で首位だった。

(出所:日経BP総研 イノベーションICTラボ)
(出所:日経BP総研 イノベーションICTラボ)
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 ジョブ型は直属の上司による評価がこれまで以上に重要になる。上司と部下が職種別に仕事の対象範囲を合意し、上司は達成度や行動を一段と細かく見ることになるからだ。直属の上司に評価されなければ、昇進や昇給が難しくなる。自由意見では「成果の定義があいまいで、評価が恣意的になる可能性」(IT・通信、一般社員・職員)を指摘する声があった。

ジョブ定義が難しい

 短所の2位は「職務記述として定義された仕事しかやらない人が増え、不都合が生じそうだ」で47.1%が選んだ。新人時代、上司から「ここまでしかやりません、と線を引くのではなく、相手の領域までカバーする気持ちで仕事に臨むように」と教わった人は少なくないだろう。自由意見でも「適切なジョブディスクリプションがつくれず業務が混乱する」(不動産、係長・主任クラス)との意見があった。

 誰かがやらなければいけないので、定義されていない仕事でも結局こなす。「日本ではジョブ型にしても、定義以外の仕事もやらされる」(製造、係長・主任クラス)。その結果、「ジョブ型と言いつつ職務定義が明確にされず、結局何が変わったの?という状況になりうる」(製造、一般社員・職員)との懸念があった。

 3位は「ゼネラリストを育成する力が弱まる」で41.1%だった。専門性を持つ人材の育成を重視しつつ、幅広い経験を積んだゼネラリストの育成も並行していく工夫が企業には求められる。

 例えば2020年8月にジョブ型制度を導入したKDDIは「いろいろな経験をしたいという希望もあり」(コーポレート統括本部人事本部長を務める白岩徹執行役員)とのスタンスだ。会社が将来の幹部候補として注目する社員が特定分野でのスキルアップを希望した場合、本人に「将来の幹部候補だ」と明確に伝えたうえで、さらに上のキャリアを目指すために新規事業や低迷事業の立て直しなどを打診することもあり得るという。