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 米Apple(アップル)は2020年11月10日(米国時間)に開催したイベントで、同社の独自プロセッサーである「Apple Silicon」を用いた初のMac製品群を発表した。本稿執筆時点ではまだ現物が市場に出回っておらず、ベンチマーク結果の話題もリーク情報頼りという状態で、Appleの出してくる数字をうのみにしていいか不明な段階であり、まだ評価が定まっていないのが現状だ。

 筆者は現在、Apple Payなどのモバイル決済やリテール店舗における顧客体験などを中心に取材しているが、それと並行して以前より米Microsoft(マイクロソフト)やWindows関連の取材も引き続き行っており、別媒体で連載も抱えている。本稿を執筆しているMacBook Proの13インチモデルをはじめ、2台のiPhoneを持っているApple製品のユーザーとしての立場から、Microsoft関連を含めた周辺取材の情報も合わせてApple Silicon Macの実際と、今後の「買い時」について考えてみたい。

Apple M1搭載MacBookを前にスピーチを行うティム・クック氏
Apple M1搭載MacBookを前にスピーチを行うティム・クック氏
(出所:アップル、以下同じ)
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「Appleが作りたい製品を自ら作る」を真の意味で実現

 Appleといえば、いわゆるパーソナルコンピューター(PC)市場の先駆けとなる「Apple I」「Apple II」といった製品を世に送り出したパイオニアと呼べるメーカーだが、当時から一貫しているのは「基本となるプロセッサーは外製」という方針だ。

 初期のAppleシリーズも米MOS Technology(モステクノロジー)の「6502」を採用したものだった。Macの時代となり、米Motorola(モトローラ)の68000系から始まり、米IBMのPowerPC、そして米Intel(インテル)のx86(x64)プロセッサーと乗り換えを続け、今回、Mac向けのプロセッサーとして4代目となる「Apple Silicon」で初めて自社設計のプロセッサーを採用するに至った。

 ビジネスユースを明確に意識した初のPCといわれる「IBM PC」では、可能な限り汎用部品を使って短期間で低コストなシステムを作り、ホビー要素の強かったPC市場を世間一般に広く浸透させることに成功した。つまり多くのユーザーの手元に高性能で手ごろな価格のPCが届く理由の1つに部品の汎用化があり、Macもまたこのトレンドを踏襲していたのだ。

 一方で、汎用品を組み合わせる以上、機能的な部分は採用する部品に制約を受けることも意味しており、仮にAppleが超・上顧客だったとしてもIntelのプロセッサーを利用する限りはそのスペックに制約を受けるわけで、せいぜい動作クロックをいじったカスタマイズ品を用意する程度だ。出荷数のボリュームを出せない限りは、専用部品は開発費も製品単価も高価にならざるを得ない。

 AppleがiOSデバイス向けプロセッサーを自社設計に移行した後もMacに採用しなかったのは「価格性能比などでIntel製品に比べて不利」という理由があった。今回、これまで重ねてきた準備がようやく整い、満を持しての発表に至ったと考えられる。

2020年6月のWWDCで発表したApple SiliconのMac製品ラインへの採用
2020年6月のWWDCで発表したApple SiliconのMac製品ラインへの採用
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最初のMac向けApple Siliconの名称は「M1」
最初のMac向けApple Siliconの名称は「M1」
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