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 鉄筋やH形鋼が値上がりし工事原価(コスト)が上昇し始めている。一方、取引価格(プライス)には今のところ、こうした原価上昇分の転嫁の兆しは見られない。コロナ禍で不透明感を増す建設市況を読み解くため、今回はMCIという指数を用いて分析してみた。その結果、マンションや戸建て住宅では施工者には厳しい状況が明らかになった。

 国土交通省が発表した2021年2月の建築着工統計調査では、新設住宅着工数(全国)は前年同月比で戸数が3.7%減少、床面積が2.9%減少となった。持ち家の着工量は増加しているが、貸家やマンションが減少し、全体の戸数は20カ月連続で減少した。大都市圏のマンションの着工減の影響で床面積も21年1月の増加から減少に転じている。一方、民間非居住建築物の床面積の前年同月比は、事務所と工場が増加、店舗と倉庫が減少して全体では4.8%の減少となった。

 21年1月は、コロナ禍に伴うテレワークの普及やネット通販の拡大によりオフィスの減少や物流の増加を関連付けて読み取ることができた。だが、建築着工統計の非居住建築物は大規模物件の影響を大きく受けるために、用途別の市況が読み取りづらい。2月は再開発に伴う大規模事務所の着工や、景気回復傾向にある製造業の生産施設着工が寄与したものと推察できる。

 連載「建築単価ウオッチ」で取り上げている建物用途のうち、まず住宅系の動向に着目してみたい。

 下図は、2019年1月から2021年2月までに東京で着工が予定されたマンション(RC造住宅)と木造住宅の棟数、着工床面積、工事費予定額、単価(工事費予定額を床面積で割ったもの)の3カ月移動平均値を2019年3月の数値を基準値(100)として指数化したものである。

建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(3カ月移動平均)(2019年3月=100)RC造住宅・東京(資料:エムズラボ)
建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(3カ月移動平均)(2019年3月=100)RC造住宅・東京(資料:エムズラボ)
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建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(3カ月移動平均)(2019年3月=100)木造住宅・東京(資料:エムズラボ)
建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(3カ月移動平均)(2019年3月=100)木造住宅・東京(資料:エムズラボ)
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 マンションの単価は2月単月値が前月から0.8ポイントほど上昇しているが、前年同期比では20年10月以降、20年12月を除いてマイナスで推移している。床面積も20年11月以降、前年と比較して大きく減少している。着工予定のプロジェクトの床面積が減少し、単価も減少している状況だ。

 木造住宅は、21年2月単月値の床面積が1月よりも増加したが、図に示す移動平均では過去2カ月の下落傾向により数値は3.5ポイント下がっている。また、前年同月比の単価は、20年10月以降は連続してマイナスを示している。下落率は毎月増加傾向にあり2月はマイナス1.9%の下落となり、全体的には厳しい市況が続いている。こちらも、着工予定の床面積が減少し、単価も下落している傾向が読み取れる。

MCIが100を下回る買い手(発注者)市場、コロナ禍の建設市場

 建築価格の市況動向を把握するための情報としては、取引価格(プライス)と原価(コスト)との関係を市況指数(Market Condition Index:MCI)として示す考え方がある。下図は、上図で用いた建築着工統計の単価指数をプライス、建設物価調査会が公表している工事原価指数(以下、CRI工事原価指数)をコストとして作成した市況指数(MCI)事例である。

 マンションの工事原価の変動は木造住宅と比較して少ないので、MCIは建築着工統計の単価指数に追従している。一方、木造住宅は、建築着工統計の単価変動がマンションと比較して少なく、かつ工事原価の上昇により、MCIの下落傾向が明確になっている。

 MCIが100を超えればプライスの増加がコストよりも大きくなるので売り手(施工者)市場、100を下回れば買い手(発注者)市場と考えることができる。このグラフの傾向からも、住宅系に関しては施工者にとって厳しい買い手市場になっていることがうかがえる。

建築着工統計(3カ月移動平均)の単価指数と工事原価指数(建設物価調査会)による市況指数(MCI)グラフ(2019年3月=100)RC造住宅・東京(資料:エムズラボ)
建築着工統計(3カ月移動平均)の単価指数と工事原価指数(建設物価調査会)による市況指数(MCI)グラフ(2019年3月=100)RC造住宅・東京(資料:エムズラボ)
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建築着工統計(3カ月移動平均)の単価指数と工事原価指数(建設物価調査会)による市況指数(MCI)グラフ(2019年3月=100)木造住宅・東京(資料:エムズラボ)
建築着工統計(3カ月移動平均)の単価指数と工事原価指数(建設物価調査会)による市況指数(MCI)グラフ(2019年3月=100)木造住宅・東京(資料:エムズラボ)
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