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 建設業界は、コロナ禍によって大きな影響を受けている。連載「市場動向が分かる『解説!建築単価ウオッチ』」では、その影響を地域や用途を限定して定量的に検証してみた。今回は、東京の鉄筋コンクリート(RC)造マンションのデータを分析した。その結果、コロナ禍でも前年に比べて着工が予定されている建物の床面積は増加傾向にあることが明らかになった。

 新型コロナウイルス感染症のため、建設業は大きな打撃を受けている。2020年4月から5月の緊急事態宣言のときには作業を中断した現場も多く見られ、現在はその遅れを取り戻すべく感染防止対策を徹底しつつ現場を稼働させている。一方、先行き不透明な経営環境により、発注者の建築プロジェクトに対する考え方やニーズにも変化が見られると予想される。

 このような背景から、建築単価ウオッチで紹介しているプライスやコストの情報も、当然影響を受けている。建築に携わる実務者にとっては、その影響度合いを定量的に把握しておきたいところである。

 国土交通省が発表した2020年10月時点の「建築着工統計調査報告」では、新設住宅着工数(全体)は前年同月比で戸数8.3%減少、床面積10.2%減少となり、いずれも15~16カ月連続で減少であった。一方、民間非居住建築物の床面積の前年同月比は、店舗と倉庫は増加したが、事務所と工場は減少したため、全体では減少となった。コロナ禍でありながらも住宅の着工数の減少とは裏腹に、非居住建築物では全ての用途が減少しているわけではない。

 では、建築単価ウオッチで対象としているマンションや事務所などのコロナ禍前後の動向はどうなっているのか? これも大変、気になるところである。そこで、筆者は東京地区のRC造マンションに着目して、建築着工統計調査のデータを再集計してみた。

 下図は、2019年1月から2020年10月までの東京で着工が予定されたRC造住宅の棟数、床面積、工事費予定額、単価(工事費予定額を床面積で割ったもの)を2019年1月の数値を基準値(100)として指数化したものである。2020年10月と2019年10月とを比較すると、棟数で15.8、床面積4.0、工事費予定額6.8、単価2.5の下落となっている。なお、東京のRC造住宅の平均棟当たり面積は1500m2前後で推移しており、おおむねマンションの傾向を示すものと考えられる。

建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(2019年1月=100)RC造住宅(東京)(資料:エムズラボ)
建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(2019年1月=100)RC造住宅(東京)(資料:エムズラボ)
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 ただし、建築着工統計は、季節や大規模プロジェクトの影響を受けるため月次の変動が激しく、これだけの情報で傾向を断定することはできないが、グラフで気になるのが単価の動向であり、基準値とのかい離幅が床面積や工事費と比較して少ないことが分かる。

 そこで、本稿では過去3カ月の数値を用いた移動平均による集計も行った。下図はその試算結果であるが、前述の図と比較してかなりマイルドな動向が読み取れる。ここで注目したいのは、2020年10月の前年同月比が、棟数1.7、床面積9.7、工事費予定額10.3の増加となっていることである。

 また、床面積のグラフを見ると、20年3月以降で前年同月比が19年を下回ったのは6月だけであり、コロナ禍でも東京のマンションは床面積が増加している。

 コロナ禍で発注が完全に冷え込んでいるわけではく、4~5月の緊急事態宣言の期間から7月ごろまでは着工を控えていたものの、8月以降にその分の実施が成されているように読み取れる。なお、単価は1.0のわずかな下落であり、着工状況の影響は受けず安定しているように見える。

建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(2019年1月=100、3カ月移動平均)RC造住宅(東京)(資料:エムズラボ)
建築着工統計の月次集計値を用いた指数グラフ(2019年1月=100、3カ月移動平均)RC造住宅(東京)(資料:エムズラボ)
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 統計の話はこの程度にするが、地域や用途に応じた詳細な集計分析により、マクロ的な全体傾向だけでは単純に説明できない現実を垣間見ることができる。