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 KDDIとソフトバンクは、5G(第5世代移動通信システム)のエリア拡大のために、4G用の周波数帯を転用する動きを見せている。すでに両社は総務省の認可を得て、2021年4月にも運用を開始する見込みだ。それぞれ4G用に割り当てられた周波数帯の一部を5Gに転用する。転用する周波数帯は4Gと5Gで共用することになる。

 一方でNTTドコモは、4G用周波数の転用に慎重な姿勢を見せている。これまでも4G電波を転用して5Gのエリアとすることは「優良誤認の可能性がある」と指摘。2020年10月に開催した決算説明会では、2021年度後半に転用を始め、その際は転用した5Gのエリアと新しい電波を利用できる5Gのエリアを明確に分けて示す意向を明らかにしている。

 優良誤認の可能性を指摘しているのは、5Gであるにもかかわらず、通信速度が4Gとほとんど変わらない可能性が高いからだ。そのためこの問題は「なんちゃって5G」という言葉でメディアに登場するようになった。

4Gの電波と5Gの電波は何が違う

 まずはここまで話題になっている電波について見ていこう。国内において、4Gで使われている電波は「プラチナバンド」と呼ばれる700M~900MHz帯と、主要バンドとして使われる1.5G~3.5GHz帯である。

 一方5Gには「サブ6」と呼ばれる3.7GHz帯と4.5GHz帯に加え、「ミリ波」と呼ばれる28GHz帯が割り当てられている。携帯電話の通信に関する仕様を策定している3GPPは、410M~7.125GHzを「FR1」、24.25G~52.6GHzを「FR2」と定義している。ちなみにミリ波とはもともと波長が1mm~10mmの電波を指す表現なので、周波数に換算すると30G~300GHzの電波を指す言葉だが、5Gの世界ではこの呼び方が定着している。

国内での5G向け周波数の割り当て。総務省やエリクソンの資料に基づく
国内での5G向け周波数の割り当て。総務省やエリクソンの資料に基づく
(出所:日経NETWORK)
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 5Gでサブ6とミリ波という2つの帯域が使われているのは、電波の性質に合わせて使い分けるためである。電波は周波数が高いほど一度に送れる情報の量が増える。要するに高速な通信が可能になる。

 半面、周波数が高くなるほど距離による減衰が大きくなる。遠くまで電波が飛ばないのだ。さらに直進性が高くなるので障害物によって邪魔されやすくなる。電波よりもずっと低い周波数を使う音波と、高い周波数を使う光を考えてみよう。ドアを開けておけば、音は回り込むので廊下の音は聞こえてくる。しかし光は壁で遮られるので廊下の様子を直接見られない。原理的にはこれと同じだ。

高い周波数の電波は遠くまで届きにくい
高い周波数の電波は遠くまで届きにくい
(出所:日経NETWORK)
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