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 4Gの電波を5G(第5世代移動通信システム)に転用すると、利用者にとってどのような影響が出るのだろうか。整理していこう。

 まず4Gを転用した周波数において、5Gに期待される内容が満たせなくなる。5Gには「超高速」「超低遅延」「多接続」という3つの「お約束」がある。しかし4Gを転用した電波しか届いていない状況では、4Gとほとんど変わらない速度しか出ない。5Gのエリアで使っているのに「夢の5G」が使えない状況に陥る。

 そもそも現状の5Gサービスは、これら3つのお約束のうち超高速しか満たしていない。超低遅延と多接続に関しては、仕様の策定が遅れていた。移動体通信の規格を定める3GPPが超低遅延の仕様を確定させたのは2020年7月だ。これまでは超低遅延を実現するための基礎的な部分が仕様として取り入れられていた。

 とはいうものの、もともとスマートフォン利用者にとって、これら3つの要素のうち関係があるのはほぼ超高速だけだろう。だからこそ携帯電話事業者(キャリア)は、4Gの制御信号を使いつつ、データ転送にのみ5Gの電波を利用するNSA(ノンスタンドアロン)方式に基づく導入を始めたのだ。

 超低遅延については、スマホでリアルタイム性の高いゲームをする場合などには有効ではある。しかしその本命は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)で没入感を高めたようなアプリケーションだろう。スマホよりもゴーグル型のデバイス向けのアプリだ。

 多接続についても、「混雑した場所でスマホがつながりやすくなる」という話とは少し違う。5Gの多接続は「mMTC」と呼ばれる。これはmassive Machine Type Communicationsの略であり、日本語に訳せば「大規模マシンタイプ通信」となる。想定しているのはスマホではなく、いわゆるIoT(インターネット・オブ・シングズ)の世界だ。

 なおSA(スタンドアロン)方式が導入されれば、5Gに転用した帯域でも超低遅延や多接続は利用できるようになる。

「5G」と表示されるのに性能が出ない

 「なんちゃって5G」の問題点は、スマホ画面に「5G」とピクト表示されるのに速度が出ない場合があることだろう。

 NTTドコモは4G向け電波の転用に当たって、転用のみのエリアを明記する方針を打ち出している。確かにマップを見れば納得できるだろうが、いちいち利用者が「通信速度が速いエリアか遅いエリアか」を確認するかは疑問だ。本来は画面上部のピクト表示を単に「5G」とするのではなく、期待される速度レンジに合わせて表示内容を切り替えるといった措置が必要だろう。

 そして、こうした状況は必ずしも4G電波の転用だけで起こる問題ではない。5Gのエリアと表示されても、4Gで接続する場合があるためだ。これは「5Gピクト問題」と呼ばれている。端末を、5Gの電波が見えていれば「5G」とピクト表示するようにしてしまうと、このようになる可能性がある。

 NSAの場合、基地局は4Gの制御信号を利用しているため、制御信号の接続先は4Gになる。データ通信に4Gを使うか5Gを使うかは基地局に任され、端末側では把握できない。このため4G側の制御によっては、4Gを利用して通信する場合がある。

5Gの電波が届いているので「5G」とピクト表示されていても、実際には4Gで通信する場合がある
5Gの電波が届いているので「5G」とピクト表示されていても、実際には4Gで通信する場合がある
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 国内のキャリアは、通信時は5Gで通信している間だけピクト表示を「5G」とし、待ち受け時は4G(つまり制御信号の接続だけの状態)も「5G」と表示できることで合意している。つまり待ち受け時に5Gと表示はされるものの、通信を始めると「4G」(あるいは「LTE」)に表示が変わる場合が出てくる。