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 日本航空(JAL)とANAホールディングス(ANAHD)が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)は、既存事業の深化だけにとどまらない。中長期の将来を担う新規事業の探索もターゲットを絞り込みながら継続している。2社ともに着目しているテーマの1つが「遠隔」だ。

宇宙空間のアバターを地球から操作

 ANAHDの新規事業部門であるデジタル・デザイン・ラボから事業化し、ANAHDの子会社として2020年4月にスタートしたavatarin(アバターイン、東京・中央)。自走式の遠隔操作ロボット「newme」を商業施設や文化施設に貸し出し、現地の様子を遠隔地から体感したり商品を購入できるようにしたりするなど、さまざまな領域でアバターの用途拡大に取り組んでいる。

 avatarinが着目しているアバターの用途の1つが宇宙空間だ。2020年11月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」内にアバターを設置して遠隔操作する実証実験に取り組んだ。

 設置したのは、左右方向に360度回転可能なカメラを搭載した「space avatar」と呼ぶ端末だ。操作に使うのは東京・虎ノ門のイベント会場に設置したタッチパッドである。タッチパッドは円盤状で、上下左右4方向のカーソル機能を割り当ててある。このタッチパッドに触れることでspace avatarのカメラを上下左右に動かし、きぼう内部の様子を確認できる。

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」内に設置した、avatarinの「space avatar」
国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」内に設置した、avatarinの「space avatar」
(出所:宇宙航空研究開発機構)
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 ISSやきぼうと地上との通信は通常、サイバーセキュリティーの観点でJAXAの認定施設内からしか認められていないという。一般施設のタッチパッドとJAXAを直接接続することなく遠隔操作できるようにする工夫が必要になった。そこで、タッチパッドでどこに触れたかをまず茨城県つくば市のJAXA施設内に設置したディスプレーに表示し、その表示画面を改めてカメラで撮影・分析して操作内容をきぼうに送る仕組みをつくりあげた。

東京都内のイベント会場で円盤状のタッチパッドを操作し、space avatarを操っている様子
東京都内のイベント会場で円盤状のタッチパッドを操作し、space avatarを操っている様子
(撮影:日経クロステック)
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 今回の実証実験では操作データを送りきぼう内部の映像を送り返してもらうというシンプルな構成となった。だが、avatarinは今後もJAXAとの実証実験を重ねることで、将来は宇宙飛行士の作業を支援したり、月面などの遠隔作業にアバターを活用したりといった展開を図りたいとしている。

space avatarで撮影した、きぼう内部の映像。映っている人物はISSに滞在中の野口聡一宇宙飛行士
space avatarで撮影した、きぼう内部の映像。映っている人物はISSに滞在中の野口聡一宇宙飛行士
(撮影:日経クロステック)
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